オマケのクリスマスプレゼント (鴫野貴澄)

ふと目が覚めたら隣にはキミがいて気持ち良さそうに眠っている。

そんななんでもないことが嬉しくて幸せで、僕の彼女って可愛いでしょってみんなに自慢したくなる。だけど彼女の可愛さをみんなに教えたくないのもまた事実で。そんな葛藤と戦いながら幕を開けたクリスマス。なんて、こんなことを言うとカッコつかないからキミには絶対にナイショだけど。

今日は偶然にも僕たちは二人ともお休みの日。お互いに用事もないからどこかに出掛けてデートしようねと少し前から話していて、キミにはナイショでプレゼントも買った。

だけどまだ他にもキミに何かをあげたいなと、眠るキミの隣で僕は頭を悩ませた。


──


「あ、おはよー」

僕が目を覚ましてからしばらく経つとキミもようやく目を覚ました。キミの寝顔が見られなくなったことを少し残念に思いながら、だけどこれからキミとデートだって心を弾ませながら彼女を見つめる。するとキミはまだ少し寝惚けてはにかみながら、おはよう、貴澄と僕の名前を呼んだ。

「おはよう。寝顔可愛かったね」

にっこりと笑えば、眠そうな目をしていたはずの彼女は目をぱちくりとさせて頬を染めた。そんなことないよと布団に隠れた彼女に、そんなことあるよと再び言えば、ありがとうと彼女はようやく布団から顔を出した。
そんな様子が可笑しくて、キミって面白いよねと笑うと、喜んでいいのか分からないとキミが困ったように笑った。

朝起きたら並んで歯磨きをするのが僕たちの日課だ。
寝起きの気だるい姿もまだ整ってない髪も、いつの間にか僕にはダメな所を見せてくれるようになった彼女は愛おしくて擽ったい。

歯磨きを終えて、前髪がちゃんとならない〜! と鏡とにらめっこをしているキミは後ろの髪もハネていることに果たして気が付いているのだろうか。そんなことを考えながら僕もうがいを済ませたけれど、前髪以外には触れずに洗面所から出て行こうとするキミはやっぱり後ろ髪にはこれっぽっちも気が付いていないのだろう。

「その変な寝癖可愛いね」
「え、寝癖!? 前髪まだハネてる?」
「そこじゃなくて、ここ」

ぴょこんと何故かそこだけハネている後ろ髪に触ると、気が付かなった! と彼女も僕の手の上から慌てて髪を押さえた。直らない……と苦戦している姿が愛らしくて、僕もドライヤーを持ってきて手伝う。
直った! ありがとう! と微笑む彼女につられて、どういたしましてと僕も笑えば、あれ? 貴澄もここに寝癖ついてるよと言われたから今度は彼女に手伝ってもらった。


お互いに寝癖をなんとか直し終えると今度は朝ご飯の時間。

朝から疲れたね。本当にね。と笑い合えば、一緒にご飯の用意をする。昨日の残りのおかずと気分を変えて食パンにしてみたけれど、キミと食べると食べ合わせが変わっているような気がするおかずとパンという組み合わせにだって気にならないし、なんだって美味しい。

幸せそうに食べ物を頬張ってはもぐもぐと噛んでいるキミを見ているとなんだか元気が出る。そんなキミを見ながら僕もご飯を食べる。

「貴澄、どうかした? なんか嬉しそうじゃない?」
「いやー、キミが美味しそうに食べてる姿は可愛いよね」
「貴澄とだから何を食べても美味しいんだよ」

やっぱり幸せそうな彼女につられて、それ僕も思ってたと笑えば、ふふっと彼女も笑った。


朝ご飯を食べ終えると、僕が食器を洗って彼女が食器を拭いて後片付けをする。のんびりしているように見えてテキパキとしている彼女はとても頼りになる。
だけど後片付けを終えて時計を見ても、まだまだ出掛ける予定の時間には早くて。

「……早起き、しすぎちゃったね」
「楽しみだから目が覚めちゃったよね」
「のんびり着替えて準備しようか」

そうだねと笑った彼女は、何気なしにつけたテレビから流れていたクリスマスソングを歌っている。そんな彼女を横目で見ていた僕もいつの間にか鼻歌交じりになっていて、そのことに気が付くと、本当に楽しみだったんだなと改めて思って自分で自分が可笑しくなった。

着替えを終えた彼女はやっぱりクリスマスソングを歌いながらテレビを観ていた。僕も隣に並んで、テレビではなくて彼女を見ると呟く。

「今日はこの服? 似合ってて可愛いやつだ」
「貴澄っていつも言ってくれるよね」
「だって本当にそう思うから」

テレビから僕へと視線が移ったことに嬉しく思いながら笑えば、キミが僕を見て目を細めた。

「貴澄に少しでも可愛いって思ってもらいたくて」
「それはいつも思ってるし、そう思ってるキミがもう既に可愛いよね」

頬を染めたキミにつられたからなのか少し照れくさいけれど、本当にキミが可愛くてたまらない。好きだなって思う気持ちがまた更に積み重なって、キミが今まで以上に大切になる。

「あ、もういい時間じゃない?」
「ほんとだね」

そろそろ出掛けようかと彼女の手を取って繋げば、少し視線が泳いだ後に僕を見て笑うと手に力を込めたキミが愛おしい。

「こうやって照れてるキミも可愛いよ」

そう言って笑うと、彼女の指と自分の指とを絡める。

キミの可愛さをみんなに教えたくはないけれど、やっぱり自慢したくなってしまう僕は欲張りなのだろうか。



「可愛い所もダメな所も頼りになる所も僕とのデートを楽しみにしてくれている所も他にもいっぱい、キミの全部全部まとめて大好きだよ」

好きとか可愛いとか愛おしいとか愛らしいとか照れくさいとか擽ったいとか大好きだとか。

そんな言葉だけでは言い表せないキミへの想いをその都度キミに伝える。形には残らない、その瞬間だけのものだけれど、僕からキミへのオマケのクリスマスプレゼントとして受け取ってくれたら嬉しいんだ。

だって今日は特別な一日だから、そんな特別な一日を僕と過ごしてくれるキミに、どうせなら少しでもたくさん喜んでもらいたいじゃない、なんてね。



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