*一緒にいたい (阿部隆也)
部活が終わると家に帰るため、自転車の元へと向かった。するとその場にいたのは見慣れた黒髪の男の子で。
「阿部くん?」
「おう、待ってたぜ」
「今日は部活は?」
「ミーティングだけだからもう終わった」
話しながら自転車の鍵を外す私の横で、阿部くんはそんな私の様子をじっと見ている。
「阿部くん、帰らないの?」
「……帰るに決まってんだろ」
カラカラと自転車を引く私の後ろには、同じく自転車を引く阿部くんがついてくる。その様子がいつもの自信ありげな阿部くんとは全然違って、とても可愛い。
「もしかして阿部くん。一緒に帰ってくれるの?」
「待ってたんだからそれくらい、言わなくても分かれよ」
オレだってお前と一緒にいたいんだよ。そう聞こえた気がしたけど、阿部くんが隣までやって来てくれたのを見ると、きっと気のせいなんかではないだろう。
「自転車がなかったら手繋げるのにね」
「あー、じゃあ今度どっか遊びに行くか」
「阿部くんは私といたいんだ?」
先程までの珍しい阿部くんの反応が可愛くて、もう一度見たくて、からかうように笑う。
すると阿部くんは、
「…だから、言わなくても分かれよ」
そう言って、溜息をついていたけど、どこか嬉しそうに笑っているようにも見えた。
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