*詰め/卒業したら (阿部、栄口、田島、泉)

[阿部隆也]
「卒業したらもう話せねぇかもな」ずっと考えてきた私の不安を阿部くんがぴたりと言い当てた。「そうだよね、もう話せないかも」口に出すと急に現実味が出てきてそれが事実であることを実感させられる。「でもそれって話そうとしない場合だろ?電話すりゃいいじゃねぇか」さも当たり前のように言ってのける阿部くん。そっか、阿部くんに電話してもいいんだ。そう思うと卒業も悪くないような気がした。



[栄口勇人]
「栄口くんの制服姿ももう見納めか」「君もね」揃って私服校の西浦へ進学が決まった私たちが制服を着る機会はもうほとんどないだろう。「最後にさ、写真撮らない?一緒に」「うん」そうして撮った写真の中の栄口くんはいつもの笑顔で笑っている。「うわ、嬉しい。みょうじさんとオレ、だ」「そりゃ私たちだよー」この距離感の、こんなやり取りだけで嬉しいなんて。私たちが先に進むのはまだもう少し先の未来かもしれない。



[田島悠一郎]
お前ももう卒業なんて早いな、とゆうくんに頭を撫でられる。だけど、子供扱いしないでと言ったって、ゆうくんはわかってると笑って頭を撫で続けるだけで。きっといつまでもゆうくんにとって私は幼馴染で妹みたいな存在なんだと思った瞬間、頭を撫でていたゆうくんの手が止まる。「わかってるよ、オレと結婚すんだろ?もう少しじゃん」約束した時とは違い、少し大人びた表情のゆうくんに、これからもきっと敵わないと思った。私もゆうくんにそう思ってもらえる日は来るのだろうか。



[泉孝介]
高校違うからもう中々会えないかもね、と言うと泉が怪訝そうな顔をした。でも、だって、そうでしょ?涙を堪えて言った私の言葉は、泉に腕を掴まれた瞬間にどこかへ消えた。「なんで会えねぇんだよ?俺はこれからもお前と色んな時間を一緒に過ごすつもりなんだけど」私の腕をぐっと掴む泉の手が震えているのが分かった。



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