*好きな子との電話 (栄口勇人)
やっと聞けた好きな女の子の連絡先。
勇気を出して電話をかけたらたくさん話せたからよかったけど、電話が終わってしまうこの瞬間は寂しい。
「じゃあ、また明日だね」
「うん、また明日!」
「「……」」
「あ! おやすみ!」
「おやすみ!」
「「……」」
終わるはずだった電話はいつまでも続いたままで。何度かそんなやり取りが続くと、電話越しに彼女の笑い声が響いた。
「……オレ、相手が切るまでは電話切れないんだよね」
「……私も」
彼女の笑い声が再び響く。
そしてオレはと言うと、彼女と同じだというだけでなんだか嬉しくなって、つい口元が緩んだ。こんなことだけで嬉しいなんてオレって単純なヤツだな、とは思うけど。でもやっぱり嬉しい。
「はは、君もなんだ。じゃあ、せーので切ろうか」
「うん」
「「せーの……」」
それでもまた電話越しからは彼女の笑い声が響く。
「やっぱり切れないよね」
「そうだね」
どうしようか、と色々話していたら彼女がふと思いついたように言った。
「今日は私が先に電話切るから明日は栄口くんが先に切って? じゃあね、おやすみ!」
彼女はそう言うと勢いよく電話を切ってしまったから、おやすみという暇もなかったけど、それってつまり、また明日も電話出来るってことでいいの!?
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