*プリンの日 (栄口勇人)

斜め前の席のみょうじさんは、昼休みにはいつも友達と色んなお菓子を持ち寄っては交換しながら食べている。オレはそんな彼女の様子を楽しそうだな、可愛いなって思いながらたまにちらりと見ている。


今日もいつものように友達とお菓子を交換して食べているみょうじさん。オレは巣山と弁当を食べながら、今日も楽しそうだし可愛いなんていつものように思いながら、やっぱりちらりと見ていた。

すると彼女がくるりとこちらを振り向くなり、「おすそわけ!」とオレと巣山の手の上に何かを置いた。彼女と少し触れた手を見てみると、駄菓子屋で売ってそうなプリンのチョコが乗っていた。

「今日はプリンの日らしいから。だからいつもお世話になってる2人におすそわけ」

そう言って笑う彼女の笑顔が眩しい。

巣山と一緒にお礼を言うと、オレの手の中にあるチョコをもう一度見る。さっき彼女の手と触れた所が熱くて、さっきまで彼女が持っていて、オレにくれたチョコが愛おしい。

チョコをぎゅっと握ったら、弁当を食べながらオレを見ていたらしい巣山に「溶けっぞー」と言われて、慌てて手を開く。


溶けてしまうのはもちろん嫌だけど、オレはこのチョコを食べてしまうのももったいない気がすんだけど、なんてね。



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