一方
みょうじのスマホの着信音で目を覚ました。
朝から騒がしくするものだからまどろんでいた気分も覚め、様子を窺ってみるとどうやら赤司からのお誘いらしい。
あいつもご苦労なことだな、と考えていたら足を踏まれた。
慌てて飛び起き、案の定転びかけているみょうじの身体を抱き止めては焦りを隠すように小言をお見舞いする。
わかってはいたものの事情を聞かされ、多少不機嫌になりながら昨日の宮地の言葉を思い出して黙って送り出した。
"みょうじの彼氏でもねぇんだし"
だから、あいつが誰とどこでどう過ごそうが関係ない。
にしても随分めかし込んで出掛けていたのでふつふつと嫉妬が湧き上がってきてしまった。
オレも随分未練がましいな。
部屋のものは自由に使っていいとのことだったので、シャワーを拝借する。
下着やなんかはさすがに目につく範囲にはないが、浴室に入るとあいつのシャンプーの香りが残っていた。
身体に悪い、と思いながら、その残り香を振り払うようにシャワーを浴室内に撒き散らした。
(今頃あいつはオレじゃない誰かと楽しんでるんだろうな)
(いっそ帰ってこなければいいのに、なんて)
(醜いにも程がある)
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