暗涙

しばらく泣きじゃくって、落ち着いた所でとんでもなく恥ずかしいことをしてしまっていることに気付いた。

「黒子、あの、もう大丈夫だから」
「そうですか?残念です」

そう言いつつも優しく身体を離してくれる。
表情は相変わらず読めないけど、今はそれで良かった。

私のことなんて何とも思っていないような、そんな表情が心地良いと思うのはきっと黛のせいだろう。
黒子は黛と似てる。そこを赤司が見出して、レギュラーになったのだから。

きっと出会う形が違っていたら、黒子の気持ちに応えていたのかもしれない。
告白のタイミングは絶対に間違っていたと思うよ、黒子。

すっかり日が落ち込んで、夜風を浴びながら二人でマンションに向かう。
黒子がマンションの下まで送ってくれて、何とも言えない気持ちになりながら謝罪と感謝の言葉を告げた。

私ももうちょっと大人らしくしないといけないな…。
赤司も黒子も玲央も、私よりもよっぽど大人びていて情けない。

そんなことを考えながらエレベーターに乗る間際まで、黒子は見送ってくれていた。

正直黒子も誠凛のメンバーなんだし、私が泣いて理由も理由だしどうしたらいいかわからなかったはずだ。
言葉や態度こそ優しかったもののきっと迷惑だったに違いない。

それなのに甘えてしまって、謝らないでとは言っていたが本当に申し訳ない気持ちになる。
家に着いてコートを脱ぎながら、もう一度黒子に謝罪しておこうとスマホを手に取った。

ロックを解除すると、いつもなら来ているはずの黛からのラインの通知がない。
来ないなら来ないでもいいんだけど、つい手が動いてしまった。

"今日も来ないの?"

思えば私から連絡することってほとんどないな。
ログを辿っても黛からのものばかりだった。

"あぁ"

そんな短い文字でも、返事が嬉しくて。
でも今日も会えないという事が、少し悲しくて寂しかった。

もし黛が、黒子と同じように私のことを思ってくれていたら。
なんて、考えるだけ不毛だわ。そもそも黛は私のことを振ったわけだし、あり得ない。

いくらか慣れてきたこの広い部屋で、服も着替えずベッドに飛び込んでもう一度泣いた。



(諦めなきゃ、忘れなきゃ)
(そう思うごとに、心に浮かんでくる)
(もう、頭痛い)

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