男前
最悪だ、とまでは思わないけど、どんな顔をして会えばいいか分からない。
きっと今日も玲央に電話することになるだろう。
そしてそろそろいい加減にしろと怒られそうだ。
「あ、赤司くんがゲーセンって、似合わないね…」
「それはさっき黄瀬と青峰にも言われたよ」
「なまえ先輩、次はオレとプリクラ撮りましょうよ!」
「黄瀬くん、抜け駆けはよくないと思います」
「そうだよきーちゃん、今日は私とデートの日なんだから!」
「えー、もう終わりって事でいいじゃないッスかぁ」
賑やかなゲーセンの中でも負けないくらいに騒ぎ出す後輩たちを尻目に、未だ白熱している青峰たちの傍に寄った。
青峰が勝っているようだ。
「あれ、なまえちんじゃん」
「こんにちは。紫原、負けてるじゃん」
「別にゲームだしー。つかなんでいるの?」
大きな手でぽんぽん頭を撫でられながら紫原と話していると、後ろから誰かに抱きつかれた。
桃井だな、背中に当たる胸で分かる。羨ましい。
「だめだよムッくん、なまえ先輩は今日は私のなのー!」
ぷくっとほっぺを膨らませて紫原にそういう桃井に、そもそも誰のでもないんだけど、と思いつつ苦笑していたら珍しく無表情でこちらを見ている赤司の姿が目に入った。
「もうせっかくだしみんなでどっか行こーぜ」
ゲームを終えたらしい青峰がそう提案し、黄瀬も同調する。
桃井はちょっと不満そうだった。
うーん、まぁ、元々は桃井と約束してたわけだし。
「桃井、次はどこに行こうとしてたの?」
「え?えっと、ショッピングに…」
「いいね、私服欲しかったんだ。男の子は気まずいだろうし、二人で行こっか。ってことで、また今度ね」
一息で言い切り、桃井の手を取って歩き出す。
えー!と不服そうな黄瀬の声が聞こえてきたけど、何より赤司と居るのが気まずい。
「先輩、よかったんですか?」
「何が?今日の私は桃井のなんでしょ?」
しおらしくおずおずと言って来る桃井が可愛らしかったので微笑みながら返すと抱きつかれた。
(私先輩のそういうところ大好きです!)
(ありがとう、私も桃井のそういうところ大好きだよ)
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