パニック!

右肩の辺りに違和感を感じて、鏡を見てみたら痣みたいなのがあった。

え、なにこれ汚れかな、痛くないし痣じゃない…と思うけど…
内心かなり焦りながらTシャツを脱いで、鏡を使って背中の方まで辿って見てみると更に驚くべき光景が目に飛び込んできた。
背中には、一面に赤黒い痣が広がっている。

突然の事態に、息が詰まる。
ぐるぐると思考を巡らせていたら、マトイさんが言っていたことを思い出した。

"実態にも影響が…"

え、でもあれって死んだらってことだったんじゃ…?
私死んでないはずだけど、もしかしてアイアンウィルの発動も換算されてたのか。

影響ってなんだろう、何があるんだろう。
痣が出来るだけ?これ治るの?とかいろいろ考えていたら悪い方にしか思考が向かず、身体が震えだす。
Tシャツも着ないでその場で蹲っていたら、いきなり電話が鳴った。

『なまえ、やっぱりまだ起きてたか。早く…』
「あ、あかし、赤司くん、どうしよう」

多分赤司くんは、私がまだ起きてるならさっさと寝ろって意図で電話してくれたんだろう。
なのに応答した私の声は震えていて、完全に怯えきっているので大層驚いたらしく、珍しく声を荒げて名前を呼んできた。

「わかんない、けど、なんか痣あって、それで」
『待ってろ、すぐに行く』

その言葉の後すぐにプツッと電話が切れてしまった。
赤司くんの家は私の家からかなり近いので、慌ててTシャツを着た。
案の定数分で家のインターホンが鳴ったので階段を駆け下りると赤司くんが応対したお母さんに会釈していたところだった。

お母さんはびっくりしてたけど、家に来ることは珍しくないので普通に家に上げている。
私の方を心配そうに見てくる赤司くんを部屋に通すと、ちょっと恥ずかしいと思いながらもTシャツを捲った。

「…これは、マトイさんが言っていた実態への影響か?」
「わかんない、けど、痛くないし痣があるだけだよ」
「背中一面か…シエラさん達に聞きたいが、明日インして聞いてみよう。痛みがあったらすぐに言うんだぞ?」

優しく背中の痣を撫でながら、赤司くんが宥めてくれるのを聞いて幾分か落ち着いてきた。
昔から私が何かしでかしたり、怪我したり落ち込んだりしている時はこうやって赤司くんが背中をさすって落ち着かせてくれる。
ちょっと今回のは洒落になってないけど。

「そろそろ帰るよ。もう大丈夫か?」
「え、帰っちゃうの」

震えも完全に収まったし、気分も落ち着いたので大丈夫と言ったら大丈夫なんだけどそれは赤司くんがいるからであってもしかしたらいなくなったら不安になるかもしれないと思いつつ、つい口走ってしまった言葉にハッとする。
赤司くんを見たら苦笑していたから顔が熱くなる。

「…なまえ、一応オレも男だから」

自制出来ているうちに退散するよ、という言葉と共に頭を撫でられたので、Tシャツを整えてから赤司くんを見送るために立ち上がる。
小さいときはよくお互いの家に泊まったりしていたので、その感覚で言ってしまったけど今の自分たちの年齢を考えたらちょっと軽率だった。

「ごめんね、ありがとう赤司くん」
「大丈夫だよ。何か変わったことがあったら連絡してくれ」

おやすみ、と残して手を振って離れていく赤司くんを見送ってから扉を閉める。
鍵をかけたらリビングからお母さんがなんかニヤニヤしながらこっちを見ていた。



(征十郎くん泊まっていったらよかったのにねぇ)
(な、何言ってるの!寝るからね!)
(お母さんもお父さんも征十郎くんなら大歓迎よ)
(そういうんじゃないでしょ!もう!)



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