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TFあどべんちゃあ:TFPとクロスオーバー編A



prime編第1話





普段は静寂なラチェットのリペアルームは好奇心と疑惑の騒めきに満ちていた。
突如現れた正体不明のトランスフォーマーがリペア台に寝かされ、全員が彼を囲うように立っている。
その傍らには簡単な検査を終えたラチェットが何やら難しい顔をしてタブレットを睨んでいた。
その様子をワクワクしながら見上げるミコはバルクヘッドの肩に座ってラチェットの見解を待ちわびていた。
それはこの場にいる全員が同じ気持ちである。
ふとタブレットから視線を逸らしたラチェットが全員を見渡した。

「第一発見者は誰だった?」
「はぁーい!あたしあたし!」
「ミコか…まあいつも厄介ごとを持ち込むのはお前さんの宿命なんだろうな」
「もー!何よそれ!?」
「だが、彼はオートボットなのだろう?胸のエンブレムは確かに我々と同じオートボットだ。危険は無いだろう」
「オプティマス、その結論は早過ぎるぞ!」

オプティマスは今だに眠り続けるトランスフォーマーをじっと見下しながら、いともあっさり結論付けた。
そんなオプティマスの甘過ぎる判断にラチェットは反論する。
まだ若い。ひょっとするとバンブルビーやスモークスクリーンよりも遥かに若い世代ではないか?
しかしオートボットでこんな若い機体が誕生した話は聞いたことがないが…
そんなオプティマスの疑念を察したのか、ラチェットが近付いてタブレットを見せてきた。

「オプティマス、確かに彼はオートボットだ。ただな…産まれた年月が合わないんだ」
「と言うと?」
「…彼はあまりにも若過ぎるんだよ。産まれてからどうも、地球時間で言うなら14〜15年しか経っていない。それに一番分からないのが、産まれたのは我々のいる【今】から1年後に彼は誕生したとコンピューターが答えている」
「そんなバカな事が…」

オプティマスは途中で絶句する。
この優秀な軍医の言いたい事が分かったからだ。

「なぁ、一体どういう事なんだ?」
「Beep?」
「結局、彼の正体は何なの?」
「なんか深刻そうか顔しているけどオートボットには違いないんだろ?」

何やら重苦しい空気が流れ始めた雰囲気を察したのか、次々と仲間達がそれぞれの言葉を一斉に2人に投げ掛ける。
ラチェットはやや鬱陶しげに無言で振り返る。各々の疑問にいっぺんに答えられるほど器用さは持ち合わせていないのだ。
オプティマスは変わらずに無表情ーーーという訳では無かった。

(あれ…珍しいな?)

普段は滅多に感情を表さない冷静なプライムの表情が少しだけ驚いたように見えたのは、出会って間もないながらも彼をずっと見続けているジャックならではの発見であった。
その時だった。

「うう〜ん…」

「…あ!ねぇ彼が起きたよ!」

ラフの驚いた声に全員が一斉に注目した。
赤い機体が身動ぎ、今からスリープモードから覚めかけているのか寝ぼけたように表情が歪むトランスフォーマーを警戒しながら凝視する。
その中でラチェットだけはいつでも謎のトランスフォーマーが暴れても拘束できるように、こっそりとスイッチを手の中に握り締めていた。
今は戦争中だ。現時点で完全に味方だと判断するのは愚かだ。
あのオーバーロードのような、オートボットのエンブレムを付けて潜入したスパイなど過去に掃いて捨てるほどいる。
どの道やる事は同じだ。
ラチェットはトランスフォーマーを睨みながら指に力を込めようとする。
そんな殺気出した空気をぶち壊すような呑気な声が上がった。
疑惑のトランスフォーマーはゆっくりと起き上がると、気怠げに背伸びして欠伸をした。

「ん〜〜…ふぁーあ。あー、なんか俺変な夢見ちまったなぁ。博物館行ってスペースブリッジに吸い込まれる夢って訳わかんねーし。んー…今何時だぁ…?………あれ?」

トロンとするオプティックでキョロキョロと辺りを見渡す。
見知らぬ部屋に、見知らぬトランスフォーマーと謎の生き物。
なんだこれ。ボンヤリしながらサイドスワイプは謎の生き物を観察する。
サイドスワイプの行動に警戒したのか、黄色いトランスフォーマーがさっと庇うように謎の生き物の前に立った。
彼を初めて見たはずなのに、何故か酷く既視感を感じる。

「君は何者だ?」

あの黄色いのどこかで会ったかなー…などと思っていると、威厳に満ちた声が背中から聞こえてサイドスワイプは振り返った。
赤と青のカラーリングが特徴的な大型のトランスフォーマーが、見定めるようにこちらを真っ直ぐ見ていた。
隣には疑惑を拭い去れない顔をして睨みつける怖いトランスフォーマーもいたが。
寝ぼけていた思考が次第に鮮明になってゆく。
だんだんハッキリして来たサイドスワイプは、話しかけて来たそのトランスフォーマーが余りにも自分の父親と酷似していたから何の戸惑いもなくそういうものだと結論付けてしまった。
それは日常生活で極々当たり前の行動だったからもちろんサイドスワイプに悪意は無い。
無いから極々自然に答えてしまった。

「君の名前はーーー」
「あ、おはよー親父。なぁいつの間に博物館から家に帰って来たんだ?俺ぜんっぜん覚えてないんだけど。て言うか、何でラチェットおじさんまでいるわけ?あ、ひょっとしてまた夕飯作りに来てくれたのか?んじゃ〜もうおでんとか飽きたから他のやつリクエストしていい?」




…………。



にへらっと笑いながら言ったサイドスワイプの言葉に絶句する一同。
状況を何も分かっていないサイドスワイプだけが疑問符を浮かべて見渡していた。

「………………おじさん?」

込み上げる何かを必死で耐えるかのように引きつった顔をしたラチェットがサイドスワイプに詰め寄る。

「え?何だよ、おじさんはおじさんだろ。アンタ、ビーみたいにもう若くないんだから別に間違ってないだろ!こないだ冗談で『ラチェットお兄ちゃん(はぁと)』って呼んだら「気持ち悪い!」つって拳骨喰らわしてきたから呼んでるだけなのに」
「はぁ!?失礼な!誰がもう若くないだと!?」
「ぐえっ!?ちょ、首掴むなよおじさん!?何なんだよ急に!更年期障害!?」
「初対面の上にまだ戯言をほざくか!?」
「ラチェット、落ち着くんだ!」

サイドスワイプに飛びかかり首を締め上げるラチェットを慌ててオプティマスが止めに入った。
ラフとバンブルビーも駆け寄って暴走するラチェットに必死に訴える。

「ちょ、ちょっと待ってラチェット!気持ちは分かるけど落ち着いて!ねぇ、さっきビーって言ったよね?バンブルビーの事知ってるの?」
「Bee…?」
「へ?あ、ああ。バンブルビーだろ、知ってるよ。あれ……でもなんか…姿が違う…?若い…?」
「!?…やはり君は」

何かを確信したオプティマスを見たサイドスワイプはきょとんとした顔を浮かべた。

「親父…いつの間に若返ったんだ?て言うか腰と尻がほっそ!とうとうダイエット成功したのか!?」
「!?」

予想外過ぎるサイドスワイプの言葉にオプティマスはただ絶句するしかない。
そんな無礼にもほどがある若僧の脳天にラチェットの拳骨が降って来たのは数分後であった。



(Bに続く)

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