11月お題 | ナノ


11月3日:心に残ったぬくもり(TFP:マグホイ♀)



「ホイルジャック」

基地の片隅で座り込みながらせっせと愛刀の手入れをしていたホイルジャックは無愛想な声で名前を呼ばれ不機嫌そうに振り返る。
すると、お堅い軍人気質なウルトラマグナスが無言でこちらを見下ろしていた。
またお説教か。面倒くさそうに武器をしまったホイルジャックはゆっくりと腰を上げた。

「これはこれは。サー自らオレに何か御用で?」
「いや…大した用事ではないのだが…」
「大したことないのならオレは失礼させてもらうぜ」
「待て、まだ行くな」

ウルトラマグナスは話を切り上げてさっさと去ろうとするホイルジャックの右腕を掴んで引き止める。
何故か目の前の上司は焦っているようだった。 口を開くが、そこから何も喋ろうとしない。どうも次に何を言うべきか迷っている風にも見えるのだが。

(何なのだ…)

チッとホイルジャックは舌打ちする。
大したことない割には右腕を握る力がずいぶんまあ強いことだ。
これはある種の嫌がらせだろうか。いや、ウルトラマグナスに限ってそれはないと思いたいが、彼に普段から反抗的な自分を快く思われていないことは知っている。
そう考えて出した結論はやはりお説教しか思い当たらない。
しかし、いい加減腕を離して欲しいし言いたい事があるなら早く言えばいい。
無言の抗議を感じたのか、ウルトラマグナスはようやく手を離した。
そのままお互いに気まずい沈黙が続く。
お互いにどちらかが口を開くのをじっと待っている。時間だけが無意味に過ぎた。ああもう、先に話すなら早くしろ。
待つのは苦では無いが得意ではい。

(やはり…)
(お互い様だな)

「くっ…」
「ふ…」

緊張の糸が切れたのか、急に笑いが込み上げて来てホイルジャックとウルトラマグナスは吹き出した。
しばらく意味も無く笑い合って、先に気を取り直したのはホイルジャックだった。

「で?だから何なんだい?」
「あ、ああ。実は……これを見せたくてな」
「うん?……酒?」

ウルトラマグナスが慌てて取り出して見せたものは、今では滅多にお目に掛かれない上質な高級エネルゴンオイルのボトルだった。
ほう!とホイルジャックは思わず感嘆の声を上げる。
ウルトラマグナスに手渡されたボトルをしげしげと眺め回した。こんな嗜好品、最後に見たのはどれくらいぶりだろう。

「大した一品だ。こんなものどこで手に入ったんだ?」
「昔、昇進祝いに貰ったのを思い出した。長い間仕舞いっぱなしだったがふと思い出してな…掘り出してきたんだ」
「なるほど、さすがキャリアだな。それで何でこんな高級品をオレに?」
「よかったら一緒に飲まないかと…」

お前さえ良ければ、だが。
そう照れながら呟くウルトラマグナスが何だか可愛いと思ってしまった自分はどうかしてしまったのか。
しかしまあ、こんな堅物軍人がまさかこんな酔狂な真似をするとは思わなかった。
クックッとホイルジャックは笑う。

「それがサーなりの口説き方なのかい?」
「なっ…ち、違う。私はただ親睦を深めようとだな」
「ハイハイ、建前はそう言うことにしておくさ。オレはただの飲み会なら拒否はしないさね。喜んでサーにお付き合いさせて頂くよ」

そう返答すると、ウルトラマグナスは半分ホッとしたように頬を緩めた。
何とも分かりやすい反応だ、とホイルジャックは苦笑する。
この堅物がまさか自分に好意を寄せるなど想像もしていなかったが、案外悪い気はしない。
不思議な感情がホイルジャックのスパークを満たす。
こう言うのも悪くは、ない。



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