11月お題 | ナノ


11月10日:秘密は星空だけが知る(AT:オプティマスとスチールジョー)



その地区をパトロールしていたオプティマスが足を負傷しているスチールジョーを見つけたのは本当に偶然だった。
木陰に身を隠した灰色の狼が静かに近づくオプティマスに向けて唸り声を上げている様子は、さながら野生の狼のようだ。
オプティマスは視線を下げる。よく見ればスチールジョーの右足が牙が生えた貝のような罠に掛かっている。
オプティマスは顔をしかめた。
棘が足に食い込み、傷口からエネルゴンが染み出して地面に水溜まりを作っていて見るからに痛ましい。
早く助けなければ傷がさらに深くなるだろう。
そう判断したオプティマスは、相手が警戒しないように両手を上げて攻撃の意思が無い事を見せた。
「待て。今は何もしない」
「今は、と言うことは終われば何かをする気なんだろう」
「疑い深いな。確かに終われば拘束させてもらうが、今は足の罠を外すのか先だ」
「………っ」
足首に食い込んだトラバサミの棘を忌々しげに見下ろしながらスチールジョーはギリギリと歯噛みする。
今は自分が不利だと悟ったのか大人しくなるスチールジョーをオプティマスは一瞥した。
機体を屈めてトラバサミに触れ、ゆっくりと左右に引っ張ると閉じていた口が開いた。
痛みと不自由から解放されたスチールジョーは気づかれないように嘆息する。
(よりによってプライムに助けられるとは…兄弟達に知られたら笑い者だな)
敵の総大将を横目で見た。怪力でトラバサミを潰して何故か袋に詰めている。
袋なんてどこから取り出した。
「…おい」
「何だ。まだいたのか。もう行っていいぞ」
あっさりと、よくもまあそんなことを。
スチールジョーは拍子抜けした。
「はぁ?おい、アンタ何を言っている?この俺を逃がそうってか?」
「ああ」
スチールジョーはオプティマスプライムというオートボットがいよいよ分からなくなってきた。
「やはりオートボットは甘ちゃんだな」
痛む頭を抱えながら呆れた顔でスチールジョーは吐き捨てる。
オプティマスは肩を竦めた。
「実を言うとそうでもない」
「何?」
「この罠は以前別のオートボットが仕掛けたものだ。最近になって思い出してね。人間が掛からないように回収して回っていたら、たまたま君を見つけただけだ」
今度こそスチールジョーは呆れた。
まさかオートボット製のトラバサミだったとは。なかなか凶悪な罠を仕掛けてくれたもんだ。
「…どうりで人間が仕掛けたにしちゃデカすぎると思ったぜ」
「オートボットの中には過激な戦士もいてね。悪かったとは思っている。だから君の事は見なかったことにしようと思うんだが、どうかな?」
「プライムとやらは随分と上から目線の言い方をしてくれるな。まあ、いいだろう。この場はありがたく逃げさせてもらうぜ」
あばよ、と自由になったスチールジョーは地面を蹴ってトランスフォームすると、直ぐにその場を走り去った。
オプティマスは苦笑しながら黙って見送った。
見えなくなってからもしばらくその場に立ち尽くしていたが、ふと懐かしそうにオプティックを細める。
「やはり、少し似ているな」
野心に燃えるスパークもその力強さも。
お前に似ているよ、と懐かしい名前を口にした。


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