TFADV短編(10月お題) | ナノ


10月28日:願いを守る騎士(ADV:オプティマス)



オールスパークの泉に飛び込んでからは全く記憶が無い。
ただ覚えていたのは、強烈な眠気とこれで全てが終わったのだという安堵感。
残された者達を想うとスパークが痛んだが、もう自分はこの世界の役目を終えたのだ。
…私の役目は終わったのだ。
だからオールスパークの海に還る。
ゴポリと口の端から気泡があふれた。
白乳のように淡く優しい光の空間は、戦いで疲れた心を癒してくれるようにオプティマスの全てを包み込んだ。



そして…

星、銀河、星雲ーーー
様々な煌めきの光と渦が闇を照らす不思議な空間の中で、唐突にオプティマスは目覚めた。

「…ここは?まさがここがオールスパークの海なのか…?」
「違うな。ここはプライムの空間だ」

ボンヤリしながら呟くと、否定する声が傍から聞こえて顔を上げた。
すると、こちらを見下ろしているマイクロンと視線が合う。
そのマイクロンは楽しそうな笑みを浮かべながら胡座をかいたまま宙に浮いていた。

「君は全ての命を守るために新たな体を与えられた。宇宙にとっても、我々にとっても君はまだ必要なのだ。だから我々が助けた」
「我々?」
「プライムのお歴々さ」
「プライムが…まさか貴方は」
「そうだ。私はマイクロナスプライム。しばらくは君の面倒を見るようお歴々のプライムから仰せつかった。まあ、突然の事で頭が回らないだろうがよろしく頼む」
「い、いえ…こちらこそよろしくマイクロナスプライム。私の役目はもう終わったものだとばかり思っていたのですが、またこうして生き返ったことに感謝します」
「…あんな最後はいくら何でも報われないだろうとお歴々が嘆いていてね。もちろん私もそうだったんだが、君が泉に飛び込んだ時に慌ててプライム空間に引っ張ったのだ。その際君の体は少しばかり変わってしまったのだが気付いたか?」
「あ、本当だ」

言われてから初めて気が付いた。
腰を捻ってじっくりと変容した自分の体を観察する。
なるほど、最後の姿からだいぶ簡素な体に変わったようだ。
飛行能力を失ったものの、これはこれで悪くはない。

「私は気になりません。重ね重ね貴方や歴代のプライム達に感謝を申し上げます」
「…………………曲者揃いのお歴々に比べると最後のプライムはえらい素直だな」
「えっ?」

間近で眩しい存在を見たかのような顔をしたマイクロナスが小声でボソリと呟く。
オプティマスは不思議そうに首を傾げると、マイクロナスは何でもないと一度排気する。

「気にしないでくれ。それよりこれからの話をしようか」
「…はい。それで私は何をすれば?」
「まずは地球に向かわせるオートボットを1人決めてくれ。地球の危機に立ち向かえる有望な若者をだ」
「それならーーー」

思い浮かべたオプティマスはそのオートボットの名前を口にした。
そう遠くない未来の再会を思うと心が弾む。

(バンブルビー、また君に会える)


そしてまた新しい物語が始まる。



prev * 29 / 32 * next
| top | | mokuzi |





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -