TFADV短編(10月お題) | ナノ


10月15日:奇跡を待つより君を望む(ADV:アンダートーン)



この星に来てから何度目の秋を迎えたのでしょうか。

この水の星はサイバトロン星で見たこともないような、壮大な景色を堪能することができます。
多彩な四季の変化、大地を潤す雨、満天の星空…
私にとっては何もかもが初めて見る景色ばかりで、毎日が新しい発見です。
だけど先生はいつも憂いを帯びた顔をしています。
少なくとも、今日まで先生が心から笑った顔を私は見たことがありません。
僕は、時々真夜中に先生が1人でー苦悩に満ちた顔で、怨嗟のように呟苦悩に新政府への非難とーそして最後はいつも、かつて喪った友人の名前を嗚咽とともに呼んでいるのを聞いています。
この星に来てから、ずっと。

おぷてぃます、おぷてぃます、あいたい…あいたい、きみにあいたい…………と。

その名前はかつてサイバトロン星を救ったプライムの名前だというぐらい、私のようないちマイクロンでも知っています。
まして先生のように過去の大戦で共に戦った戦友なら尚更のこと。
しかし、偉大なプライムは今はもう…いないのです。
お亡くなりになったと、新政府の公式発表で聞かされましたから。
それ以上の情報は残念ながら伝わらないのです。
過去にはさっさと蓋をする。
所詮はもう過去なのだからと、新しい世代のオートボットはもはやオプティマスプライムに心を傾ける者は極少数となりました。
これが新政府の意向なのだとすれば、なぜ先生はこれほどまでに苦しまなければならないのでしょう。

ああ、私には何もできない。
いちマイクロンの私は声を殺して泣き続ける先生の寂しそうな背中をじっと見守ってあげることぐらいしか、何も。

ああ、偉大なオプティマスプライム。

貴方は本当に亡くなられてしまったのですか?
貴方は今、どこにいるのでしょう。
もしも生きているのなら、一刻も早く先生の前に現れて欲しいのです。

先生を笑顔に出来るのは貴方だけしかいないのです…

プライマスよ、どうか。
このちっぽけなマイクロンの祈りを聞き届けてください。

先生とオプティマスプライムに、プライマスの祝福がありますように。





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