10月14日:とても強くとても美しい(ADV:鹿蜂)
この泥の星には季節とやらがあるらしい。
春夏秋冬、人間共がテレビで言うなら今は秋という季節だそうだ。秋とやらは何故か物寂しい気分になるらしいが、たぶんそのせいだ。
赤い空を見上げている内に、感傷的な気分になって寂しくなってしまうなど。
しかしそういう時に限ってあえて孤独を選ぶ。
いかに野蛮で狡猾なディセプティコンだろうと、たまにはそんな気分になるのだ。
だからいつものアジトを黙って抜けて、1人で黙々とドライブしていたのだが…
何故、このオートボットに出会ってしまったのかさっぱりわからない。
「サンダーフーフか?珍しいな、今は1人なのか?」
「…何でテメェがここにいやがんでぃ」
「俺はパトロールだよ。サンダーフーフは…お前もパトロールか?」
「は…そんな退屈な仕事は蟹野郎の仕事だせ」
「じゃあ何で1人でここに?」
「………ただの散歩だ」
嘘ではないからぶっきらぼうにそう吐きすてる。
ビーグルモードからロボットモードへトランスフォームすると、ぽかんとした間抜けな顔をしたバンブルビーがこちらを見ていた。
意外だ、と思わんばかりの表情に思わずサンダーフーフは排気する。
「何だよ。散歩をするディセプティコンがそんなに珍しいか?」
「いや、そんなことはないけど…なんか意外だなって」
「意外?テメェなんぞに俺の何を知ってるってんダ?」
「別に悪い意味で言った訳じゃないぞ!ただなんて言うか…」
「ああ?」
「物寂しそうだなって」
「…何だと?」
「たまにオプティマスもそんな顔して1人で夕焼けを眺めるから。彼は何も言わないけど、たぶん何か……寂しいんじゃないかって思う」
少し寂しそうに語るバンブルビーに、サンダーフーフはオプティックを見開いた。
「だから寂しい時は誰かに傍にいて欲しくないか…?」
「…ハァ?」
「秋の夕方は人恋しくなるだろ?」
いつの間にか目前まで近づいたバンブルビーにそっと手を握られる。
やはりオートボットの手は小さい。小さい癖に機体の熱が金属の指に染みるように伝わってくるのがなんだかむず痒い。
「テメェは馬鹿だろ」
「な…誰が馬鹿だよっ」
馬鹿じゃなけりゃ何なんだよ。
よくよく見ればこいつは目に痛いほど黄色だなとくだらない事を考えつつもその小さな手を振り払わなかったのは、秋のせいだ。
たぶん。
いや絶対に。
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