大好きな針の音(デニーとフィクシットのほのぼの)
カチカチカチ。
リズムを刻むその音は、トランスフォーマーやマイクロンの聴覚センサーに心地よく聴こえた。
「デニーはん、それは何ですのん?」
「これかい?懐中時計だよ」
「かいちゅうどけい?」
「人間が使う時計の1つでね。ほら、こんな風に丸い形をしていて鎖が付いている時計さ。服の懐に入れて取り出すから懐中って読むんだよ」
「へぇ〜。なんだか不思議な音がするんやなぁ…秒針の音がなんだか気持ちいい…」
デニーに持たされた懐中時計を顔の横に当てたフィクシットはうっとりとオプティックを閉じた。
デニーは不思議そうに首を傾げる。
「秒針の音がそんなに気持ちいいのかい?」
「うん。なんて言うか、スパークの鼓動によく似ているようで落ち着くんや」
「そうかぁ…君達にとっては心音みたいなものなのかな?…なぁフィクシット。よかったらそれは君にあげるよ」
えっと驚いたフィクシットはデニーを見上げた。
デニーは優しい笑顔で腕を組んでいる。
「そんな、悪いし!」
「いいからいいから。君なら大事に持っていてくれるだろ?」
「でも、こんな綺麗な懐中時計ほんまにボクがもらってエエの?」
「遠慮しないでくれ。君だからあげるんだ」
ニッと笑って肩を叩くデニーに、フィクシットはまじまじと懐中時計を眺めながらありがとうデニーはん、と嬉しそうに呟いた。
(終)
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