TF 100題 | ナノ





0002:邪魔者はキスで追い払え(ビーププ←セン)



ソファの真ん中に座って腕組みするオプティマスを挟むようにバンブルビーとセンチネルが言い争っている。
オプティマスはブレインが痛くなった。
久しぶりの休日は一日中自室で音楽でも聴いてゆったり過ごそうと思っていたのに、朝っぱらから呼んでもいない人物が二人も押し掛けて来るなんて最悪だ…

「ねーねーオプティマスぅー今日は休日じゃん?せっかくいい天気なんだからさぁ、ドライブしに行こうよぉー!」

腕に絡みつきながら上目遣いで甘えて来るバンブルビーがちょっと可愛いなぁ…と、思わず顔がほころぶ。
しかしいきなりセンチネルに顎を掴まれて、強引に振り向かされてしまった。グキッと嫌な音がするが、センチネルは構わず怒気を込めた口調で怒鳴ってくる。

「ちょ、センチネル痛い!」
「ププにいきなり何すんのさ!?」
「うっせぇ!お前は引っ込んでろバンブルビー!おいオプティマス!せっかくこの俺様がはるばる地球に来てやったんだからありがたくこの街を案内しろ!」
「良かったら街の地図をダウンロード出来るけど」
「やかましい!落ちこぼれの分際で俺の命令に逆らう気か!?」
「いやそんなつもりは無いが…しかしそれならジャズの方がこの街に詳しいはずだし、私よりも彼に頼んだ方がいいんじゃないか?」
「そーそー。ジャズったらすっかりこの街の魅力に取り憑かれちゃってさぁ。休みは朝からドライブしに行くよ。今じゃ俺より詳しいし、センチネルプライム様は同じエリートガードとご一緒の方が宜しいのではぁ?」

センチネルは固まった。バンブルビーは抱き付いたままニヤニヤしている。オプティマスとしては、悪気は無く親切のつもりで言ったつもりだった。
苦笑しつつ、さらに親友にトドメを刺す。

「それに、何も私なんかと一日中一緒にいたらその、君が不愉快になるだろう?」
「なっ……な…」

親友の思いがけない言葉に絶句する。センチネルの恋心など微塵も知らない本人からこんな事を言われたらかなりキツいだろうなぁ…バンブルビーはちょっびっとだけセンチネルに同情した。

「センチネル、急にどうした?」
「へ?…うわぁ!い、いきなり近付くんじゃねぇ!顔近すぎんだろーが!?」
「あ、すまない」

固まったまま動かない親友を心配したオプティマスが不安げな顔で急に覗き込んで来るものだから、心の準備が出来ていないシャイな男は大袈裟な身振りで尻餅をつく。
それを見たオプティマスは慌てて立ち上がった。

「大丈夫か?ほら、手を貸すよ」
「お、おう」

呆然としつつもセンチネルはドキドキする胸の装甲に触れた。なんだかポンプの鼓動がやけに早い気がする。頼むから気付かないでくれよと、排気しながらセンチネルはオプティマスが伸ばす手を握った。
ーが、握った瞬間変に力を込め過ぎたらしい。無意識にオプティマスを引っ張ってしまった。
そのままグラリと前に傾くオプティマス。

「あっ」
「へ?」
「…あっ?」

酷く間の抜けた三者の声。
傾痛い機体は重力に逆らえず、そのままセンチネルの上に覆い被さってしまう。ぶつかり合う金属音。そして、唇に感じる柔らかな感触が再びセンチネルを硬直させた。

「あぁぁぁぁ!?何してんの何してんの何してんの!早く離れてよ二人共ー!?」

悲劇の瞬間を目撃したバンブルビーが激怒しながらオプティマスの腕を掴んで無理やり引き剥がす。
ハッと我に還ったオプティマスは慌てて自分の唇を拭った。さらにハンカチを持ったバンブルビーが執拗に吹いてくる。
一方、ブレインがフリーズ状態のセンチネルは口を開けたまままだ固まっていた。

「ん、バンブルビーもういいから…すまないセンチネル!えぇと今のは不幸な事故と言うか…!と、とにかく忘れてくれ!忘れよう!な?……おーい大丈夫か?」
「………」

ふらぁ〜…とセンチネルは静かに立ち上がる。
慌てて肩に手を置くが、振り返ることも無くそのまま部屋を去っていった。扉がしまって後に巨大な金属が倒れる音がしたが、たぶんセンチネルだろう。
ラチェットの怒声も聞こえて来た。

「…彼には悪いことをしてしまったなぁ。今度会ったら謝らないと」
「別にいいんじゃない?たぶん喜んでるだろーし」
「どうしてだ?だって私と、その…事故だったが気持ち悪いことをしてしまったのに?」
「鈍感プライムはそんなこと気にしなくてもいいんでーす!それよりさぁ…」
「あっ」

ジャンプしたバンブルビーに勢い良く押し倒された。ソファに背中が埋まり、バンブルビーは膝の上に乗って驚くオプティマスに口付けた。
次第に真っ赤になる頬を撫でながらクスクスと笑う。

「お邪魔虫はいなくなったし、もうドライブなんかいいから一日中部屋で気持ちいいことしようよ。ね、オプティマス?」
「あ、ああ…」

一体、この小さな機体のどこにそんな力があるのだろう。オプティマスは唖然としながらも、静かに頷いてバンブルビーを抱き締めた。

(終)

3



目次 MAIN




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -