0001:無駄だと理解していても(メガププ)
まったく、この男はどうやったら諦めを知るのだろう?
毎日毎日押し掛けてきては、事もあろうに敵対するオートボットのプライムを口説こうとするなんて正気の沙汰ではない。
そうメガトロンに言えば、彼は笑って一蹴した。
「惚れた相手を口説いて何が悪い?」
そしてそのまま距離を縮めて此方へ近づいて来る。
オプティマスは目の前で立ち止まったメガトロンを見上げた。破壊大帝にこんな至近距離まで近付かれても殺されないオートボットは史上初ではないだろうか。
そんな事をぼんやり考えていると、メガトロンの手が頬を撫でてきた。その仕草がまるで恋人を愛おしむように思えてオプティマスのスパークがざわつく。メガトロンの赤いオプティックがスッと細められた。
そのまま顎に手を掛けて上向かせられる。より間近に迫るメガトロンの顔から背くことが出来ない。
「我はお前が欲しい。オプティマスプライム」
「…お前が欲しいのはオールスパークの力だろう。私はただのオートボットだ。私の何をそんなに欲しがるんだ」
「そうだな…ただ愛おしむためだと言えば信じてくれるか?」
愛?
メガトロンが愛だと?この欺瞞の王が、よくもそんな嘘をヌケヌケと口にするものだ。
だいたいディセプティコンは愛情を理解出来るようプログラムされてはいないーと、大学で学んでいる。
でなければ、何百万年も戦争などするものか。
オプティマスは無言で首を横に振る。
「だろうな」
予想通りの反応だが少しばかり寂しさを覚える。
言葉でいくら説明してもなかなか落ちないだろうとは覚悟していたが、ここまで堅物だとは。
いっそのことこのまま攫ってしまおうか。上質な檻の中に閉じ込めて、この破壊大帝しか考えないように躾るのもまた一興だが、何故か実行するのを憚れる。
あくまでもオプティマスの口からYESと言わせたいのだ。
「我はお前を伴侶にしたい。我と結婚しろ。宇宙一幸せにしてやるぞ?」
「バッ…!な、何をふざけたことを、誰が、お前なんかと…!」
「ふ、せいぜい吠えていろ。いずれ我を好きになるのだからな?それまで気長に待ってやる」
「〜〜〜っ」
真っ赤になった顔で更に文句を言おうとするが言葉にならないらしい。
メガトロンは笑いながらそのまま顔を近付けて、唇を塞いで黙らせた。
(終)
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