TFA短編 | ナノ

カケラでもいい。(ウル→ププ)

叶えようとしたはずの願いがあった。
確かにそれはあったのだ。遠く昔に捨て去ったはずのそれを。
カケラでもいい。自分は拾いたいのだ。



「私は時々自分の地位を煩わしく思う」

憂いを帯びた顔で残念そうに呟く最高司令官の横顔。
重苦しい溜息がやけにだだっ広い司令官室内に響いた。
それまで作業をしていたエリートガードたるセンチネル・プライムは呆気に取られた顔で動きが止まった。

「あ、あの?サー。一体どうしました?」
「私の立場は思いの外不自由に縛られていると思ったのだ。権力を手に入れる為に差し出した対価は一体何だったのだろうな?」
「それは…」

そんなものは覚悟の上ではないか?
何を今更。センチネルは口には出さない代わりに胸の中で舌打ちする。目の前の聡明な最高司令官は、理由は分からないがうつのような心情らしい。
ストレスか?だが、嘘だな。表面はいくらでも親しげな笑みを浮かべるこのお方は、いざとなればいくらでも冷徹な牙を向ける。そうでなければマグナスの地位など決して手に入らない。
ここは最高司令部。選ばれたオートボットのみが集った摩天楼だ。
その最上階の椅子に座れていると言うのに。
ウルトラマグナスはつまらなそうに窓の外を見下げた。大気などなく恒星も近くにないこの星は常に夜だ。
煌めくライトが闇を揺らめき住民は眠ることはない。
そこでセンチネルははっと気づく。
司令官の見つめる先、下級オートボット達がたむろする旧施設には確かオプティマス・プライムが仲間達と共に来ているはずだった。
あの汚らしい土の星から!大した戦績もない下っ端部隊を何故かウルトラマグナスは気にかけていた。
部隊、ではない。本当に見つめている先は奴のはずだ。

「…随分とご執心ですね」
「何の話かな?」
「お気づきでしょう?オプティマスですよ。確かあいつ…彼も地球滞在の報告のために来ていると聞きましたので。サー、ひょっとして会いたいのですか?」
「地球での出来事は彼の口から直接聞きたい。オプティマスはプライムだ。当然の義務だろう」
「そうですね。ですが腑に落ちない事もありますよ。最近、彼の周りにやたら監視を付けているのは他に理由でも…?」
「センチネル」

穏やかな口調で名を呼ばれたセンチネルはギクリと身を強張らせた。

「理由を聞きたいかね?」
「……いえ。失礼しました」

顔は微笑んでいるが笑っていない。
少々突きすぎたか。これ以上は深入りしてもこちらの身が危険になるだけだ。センチネルは小さく排気して再び仕事に戻る。
この方は決して優しいオートボットではない。
そうだ。オプティマスがセンチネルから見れば今の今まで無事にいられた理由を考えれば分かるはずだ。
恐らくウルトラマグナスは絶大な権力を惜しみもなく駆使して彼を守っている。時には過剰なほど監視の目を向けているほどに。
まるでオプティマスの一挙一動を見逃さんとしているようなーー

これに当てはまる言葉は何だったか?
何にせよそれを確かめる必要はあるだろう。


(終)


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