TFAショックさんが溜息をついた数 | ナノ





ショックさんが溜息をついた回数 4回目(ブラー+ププ)



人気の無い森の中で剣戟の音が響き渡る。
そしてその緊迫した雰囲気が、互いに命を取り合う殺し合いだという事実を嫌でも思い知らされた。
片方は殺意を漲らせ、しかしもう片方は戸惑いを隠せない様子で必死に叫び続ける。

「止めろ、止めてくれ!何故味方の君がこんな真似をーーー!?」
「黙れ!エリートガードの名に掛けてお前を倒す!この裏切り者め!!」

激流の如き憎悪を叩きつけられたオプティマスは激しいショックを受ける。
こうしている間にも攻撃は更に苛烈さを増してゆく。素早い一撃を交わし、また受け流しながら説得をし続けるのは想像以上に気力を奪う。
敵ならば無論倒せばいい。それだけの力が彼にはあった。マグナスハンマーの柄を握る手に力を込める。
けれどそうするわけにはいかないのだ。
何故なら目の前に向かって来る彼は、

「オプティマス、オートボットをよくも裏切ったな!アタシは絶対許さない…!」
「裏切った…私が?それは誤解だ!私はオートボットを裏切ってなどいない!君は何者かに騙されているんだ、頼む!私の話を聞いてくれ!」
「黙れと言った!裏切り者の言い訳なんて聞きたくない!」
「ブラー!!」

もはや問答無用!
そう言わんばかりにソードを槍のように構えながら突進するオートボット、ブラーにオプティマスは悲痛な声で叫び続けた。
普段の彼からは想像も出来ない程に歪んだオプティックの光に思わず息を飲む。違う。これはいつものブラーではない。何の理由も無しにこんな真似をするはずがない。
そもそも何故いきなりこんな事になってしまったのだろう。確かオプティマスは二人だけで話があると、基地から遠い場所のこの森へと彼に呼び出されここまで一人で出向いた。
そして相対した瞬間ブラーが襲い掛かって来たのだ。何の前触れも無く。

(彼が言っていた裏切り者とは一体?)

避けながらも思案する。仲間に連絡するのも考えたが、オプティマスは何故自分を裏切り者と罵るのか、どうしてもブラーに理由聞きたかった。そうしなければならない気がした。
しかしどうブラーを止めればいい。
四方八方に飛び散りながらオプティマスを翻弄するブラーの素早さは、成る程エリートガードに選ばれただけの実力はある。
鈍る機体を容赦無く切り刻まれ、本気で反撃出来ないオプティマスは堪らず地面に膝を付いた。
その機会を逃さぬとブラーが加速して襲い掛かる。剣先は真っ直ぐオプティマスの首元を狙う。オプティマスは動こうとしないーー

「覚悟!」

絶対処刑を告げる剣先が斜めから振り下ろされた瞬間、オプティマスはマグナスハンマーをブラーの足元に放り投げた。
驚いたブラーは反射的にジャンプして交わす。
が、そこがオプティマスの狙いだった。即座に地面を蹴って急接近したかと思うと機体を反転させ背中をブラーの正面に当てた。さらにブラーの右腕を掴みながらすぐに屈むと思いっきり地面に叩きつけた。

「がっ、は………!」

遠慮無用の一本背負いに機体サイズの小さなブラーは流石に堪えたのか細い声にノイズが走っている。
それでもなお暴れようともがく彼をオプティマスは必死で地面に抑えつけた。

「もういいだろう!教えてくれブラー、何故いきなりこんな事をするんだ!私が裏切り者とは一体どう言う事だ!まさかエリートガードの誰かがそんな命令を君にしたのか!?」
「くっ…今さら白々しいよオプティマス…!アタシだって最初は信じられなかったさ…でもつい最近とある方から極秘情報を貰ったの…」
「ある方…?」
「そう…その方が仰るには、オプティマス…貴方はあの破壊大帝メガトロンと密通していると!影でコッソリ会ってはオートボットの情報を流しているってアタシは聞かされたんだ!」
「な………私が…違う、私はそんな事…!」
「していないって言いたいの?アタシだってもちろん最初は信じられなかった…だから自分の目で確かめようと思って、ここ最近貴方を監視していたんだ。そうしたら昨日の満月の夜、まさにここでアタシは見た。オプティマス、貴方がメガトロンとーー」

絶句するしかないオプティマスをさらにブラーは追い詰める。
ギラギラと怒りに燃える視線を向けながら、揺るぎ無い事実と言う無情なトドメを刺す。

「寄り添いながらキスを交わしているのを!」

ーーーズドォン!!

頭の中を何かが貫通した。そんな衝撃的な体験は初めてだったオプティマスは、一瞬何が起きたのか理解出来なかった。
気が付けば自分の顔が半分無くなっている事、そして目の前で自分を撃ったはずのブラーは茫然とした顔で口をパクパクさせていた事ーー

(左腕に仕込み銃か…)

ドサッと糸の切れた人形のように機体が地面に倒れた。
でも全く感覚は無い。
もう何も見えない、何も聞こえない…

「あ…あれ……?おぷてぃます?あれ?あれ?なんで?あたしはいったいなにを……え?え?」

(ブラー、君は何も悪くなイ…ナニモ………)

各部回路の制御に深刻なダメージ。
声が出ない。こんな時に…ああ、このままじゃ確かに私は…

「あ…ああ…!オプティマス、オプティマス…!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!アタシはアタシはただあの方に少しでも役に立ちたくて…好きになって欲しくて…!!」

オプティマスには、悲痛に叫ぶブラーの気持ちが痛い程よく分かった。

(メガトロン…)

もう会えないかもしれない。そんなのは死んでも嫌だった。
だからひたすら名前を呼んだ。呼び続けた。私の愛しい者の名を。
意識が完全に落ちる前、視界の端に映る銀色は幻だったのかオプティマスにはもう分からない。

4



目次 MAIN




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -