TFAショックさんが溜息をついた数 | ナノ





ショックさんが溜息をついた数 5回目(ラチェット+センチネル)



ブラーがオプティマスを襲い、頭部に銃撃を受け意識不明の重体だと苦々しく報告するラチェットの言葉を最初に聞いた時は此方の頭がガツンと鈍器で殴られたような衝撃だった。
音声回路が一時的に故障したかのように、言葉が出て来ない。

「…センチネル?聞いていますか?」
「あ、ああ…聞いている。それで、オプティマスの容体は回復するのか?」
「幸いにも処置が早かったので今はカプセルの中で眠っている状態です。しかしブラーの攻撃で頭部が半分抉り取られたため多少記憶の混乱が見られるかもしれませんが、とにかく意識を回復しない限りは何とも言えませんな」
「そう…か。とにかく、オプティマスは死ぬことはないんだな?」
「はい。…ところでセンチネル、ブラーの様子は?」
「ああ、とりあえずオプティマスを襲った容疑者として拘留している。今、ジャズやロングアームが尋問している最中だ」

親友が死ぬことは無いと聞かされホッとしたのも束の間、こっちもこっちで非常に厄介な問題を抱えてしまったとセンチネルは頭を抱える。
仮にもエリートガードのオートボットが味方を襲ったなど前代未聞の不祥事だ。しかも襲われた被害者がオプティマスだなんて本当になんと運の無い奴だろう。
メガトロンに目を付けられるわ50年も地球という得体の知れない星で昏睡するわ果てにはブラーに殺されかけると来たもんだ。
有り得ない確率で不幸がいっぺんに来過ぎる。奴は一度お祓いでも受けた方がいいんじゃないのか。

(お前が大怪我する度に俺だって死にそうになるほど心配してんだよ…)

もどかしい。ああ本当にもどかしくて堪らなくなる。
あいつがエリートガードであったならこんな、スパークを切り裂かれるような想いをしなくて済むのに。
いつでも自分が守ってやれるものを、しかしいつも何かが邪魔をする。

「まあ容疑者と言ってももうじきブラーは監視付きで釈放されるだろうがな…」
「何じゃと?オプティマスを襲ったと本人が認めたんじゃろうが。何故そんな早く釈放されるんじゃ!本当にちゃんと調査しとるんか!?」
「…途中からタメ口になってるのはこの際突っ込まねぇがな。俺だって完全に納得した訳じゃねーよ!ただパーセプターがブラーの機体から遠隔操作専用のナノマシンを摘出したと報告があった。なんでもオートボットの従来のナノマシンには見られない高度な技術らしくて、それがディセプティコン従来の技術に非常によく似ているとよ。ならつまり、ブラーはディセプティコンの誰かに捕まってナノマシンを打たれて洗脳されたと考えるのが自然じゃねーか?これが執行部の釈放理由らしいが、何より上司のロングアームが弁護しまくってんだよ。しつこいぐらいにな…」
「ロングアームが?…おい、それでおまいさんは納得するんか?最初に報告した時、てっきり取り乱して騒ぎ出すとばっかり思っとったが…意外に冷静じゃのう。親友のオプティマスが撃たれたのに」
「…口には気を付けろよラチェット。いくらアンタがグレートウォーを生き延びた戦士だろうと今は俺が上官だ。ウルトラマグナスの副官たるべきオートボットがいちいち端末部隊の司令官が死に掛けたからと無様に取り乱すなどは許されんからな」

睨みつけるセンチネルを黙って見返していたラチェットは、やがて呆れたように苦笑した。

「何が可笑しい!?」
「まったく心にも無いことをよくもまぁ。オプティマスが心配で夜も眠れんと素直に泣いて縋り付いたらどうじゃ。スペースブリッジを使えば簡単に此方に来れるじゃろう」
「だ、誰が心配なんかするか!後タメ口を止めろ!」
「あー報告は以上。通信を終了する」
「おい、待っ…!ああくそっ切りやがった!」

椅子を蹴飛ばして立ち上がるがモニターは既に真っ暗闇だった。舌打ちをして再びドカリと椅子に腰掛ける。
さて、とセンチネルは思案する。
尋問中のジャズによればブラーの精神状態は酷く不安定らしい。オプティマスを襲うまでの記憶が見事にすっぽりと都合良く抜け落ちているために状況証拠が立証しづらいだろう。
ただブラー本人が認めているために謹慎処分や、最悪の場合は階級降格などの重い処分はまず免れまい。
その時はブラーの上司であるロングアームも何がしらの責任を追求されるはずだ。
もとよりそうしてもらう。
自分の預かり知らぬ所で隠蔽などされてはオプティマスも自分も納得出来ないだろう。
死んだわけではないが、要は親友の敵討ちのつもりだ。センチネルは八つ当たりに近い感情でブラーやロングアームを厳しく詰問してやろうとこの時決意した。


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