TFAショックさんが溜息をついた数 | ナノ





ショックさんが溜息をついた回数 3回目(ロンブラ)



ブラーの心理的な分析を根気よく行った結果、彼は本当は酷く臆病なのだとロングアームは知る。
格式の高いエリートガードに選ばれ、アカデミーにいた時に夢描いていた理想の職場とは程遠い高級士官達による腐心が蔓延している現実に、純粋な彼はどれほどショックを受けただろう。
身近に友人は確かにいる。しかしそれ以上に敬愛すべき理想の上官が目の前に現れた。
異例の早さでプライムに出世したエリートガードの鑑とも賞賛すべきその上官に告白されたブラーは舞い上がった。
数ある初級士官の中からまさか自分が彼に見出されるなんてまるで夢のよう。最初はこんな特に取り柄の無い自分なんて、などと卑下していたブラーはやるせなさと恥ずかしさでロングアームとの情事を断わり続けていた。その時の残念そうなロングアームの苦笑いがブラーの罪悪感を増してゆく。

「ごめんなさい。本当は初めてで怖くて怖くて堪らないんです。面倒なアタシで本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさい!それでもロングアーム長官はアタシが好きだと仰るんですか…?」
「もちろんですよブラー。私はいつまでも待ちますから。貴方がいいんです。いっだって真っ直ぐ頑張る貴方が大好きですから」
「長官…」
「どうか二人きりの時はロングアームと呼んでください。私のブラー」
「あ…そんな…とてもとてもできませっ、はっ……ん、ん」

穏やかな表情を浮かべるロングアームに見惚れるブラーは近付いて来る唇を拒む事無く受け入れる。
ちゅ、ちゅっ、と啄ばむような大人のキスにうっとりと酔い痴れた。

「んっ…ブラー。やっとキスだけは大人しくさせてくれるようになりましたね…ふふふ」
「あ……ちょ、長官………」
「ロングアーム、と呼んでくれブラー」
「…ロングアーム…あ、の…その…今夜は…」
「ん…?もちろん貴方が嫌がるようならこれ以上しませんから安心してください」
「ーいやっ、違います。どうか、アタシを抱いてくださいロングアーム!」
「…ブラー…?」

今までに無い真剣な表情でロングアームの胸に縋り付くブラーに一瞬硬直する。それでもやはり震える背中をよしよしと優しく撫でてやると、ブラーは急に顔を上げて今度は自分からキスをしてきた。

「アタシは、アタシはロングアームが好きです…!アタシ本当は臆病で、怖くて受け入れる事が出来なかったけど…貴方なら何もかも受け入れられると思います!だって役立たずなアタシをいつも優しくしてくれたのはロングアームだけだったから…嬉しくて嬉しくて…」
「ブラー…」
「アタシもっともっともっとロングアームの事を知りたい!そのためなら何だってします!アタシの処女だって何だって捧げますから、だから…どうかどうかアタシを捨てないでください!」

「アタシを…アタシだけを愛してると言ってください…!!」

それは血を吐くような、いっそ儚さすら覚えるブラーの告白をロングアームはーショックウェーブはどこか他人事のような心地で聞いていた。もしも今自分がブラーを拒絶すれば、彼は間違い無く正気を失う程の絶望に苛まれる事だろう。
そう、まるで自分のように。かつて恋慕した相手から拒絶された苦しみを抱える羽目になる。腕の中で嗚咽するブラーも。
そう考えれば微かに罪悪感が沸くが、不意にロングアームは我に返った。
当初の目的を今になって忘れるのか?まさかこの冷酷な自分が彼の健気さに絆されているとでも?
オプティマスさえいなくなればメガトロンの気高い魂を奪い返せるのだ。
あの欺瞞の王を我々の元に取り戻せるのだーー
一瞬、揺らぎかけた決意が再び芽生え始める。

(俺はあまりにもこいつと共にいすぎたな。だが…俺の事をもっと知りたい?無理だ。俺の本当の正体を知った時、きっとお前は狂ってしまうだろう。だからもう終わりにしよう。なぁブラーお前もその方がいいだろう?それがお互いのためだ…)

クックック…

ロングアームは片手で顔を覆いながら自嘲気味に笑った。
しかし直ぐにニコリと優しいロングアームの顔に戻り、いきなり泣き続けるブラーを押し倒した。

「ろ、ロングアーム…!?」
「ブラー…私の愛が欲しいんでしょう?そのためなら何でもすると、約束してくれますか?」
「は、はい!」
「本当に?誰にも言わないと誓いますか?」
「誓います誓います誓います!アタシは、アタシのスパークと機体は全部全部全部ロングアームのものだから!だから、だから…!」
「…いい子だよお前は。本当にーー」

ふっと冷たい微笑を浮かべるロングアームは懐に隠し持っていた一本の注射器を取り出した。中身を確認した後、嬉しい嬉しいと涙を流しながら何度も抱き締めて来るブラーの細い首筋に音も無く針を刺し入れる。
ショックウェーブ特製の意識を完全に乗っ取り外部から遠隔操作できるナノマシンをゆっくりと注入した。

「あ…?あ、あーーーー…」

ビクリと痙攣するブラーをロングアームは無言で見下ろしていた。
ギリギリと傷むスパークの痛みを必死で誤魔化しながら…

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