TFAショックさんが溜息をついた数 | ナノ





ショックさんが溜息をついた回数 2回目(ロンブラ)



心に付け入る事はとても簡単だ。
安心感を与える柔和な笑みと、細やかな気配り。
オートボットに潜入する際にとても綿密に作り上げた『誠実で好青年のロングアーム』という人格は、接触したターゲットの誰もが警戒心を解く。
スパイ任務としては最適の人格だとショックウェーブは自負する。これまで一度も自分の正体について怪しまれた事は無い。メガトロンの欲しがる情報を手に入る為に、時には人に言えない行為もした。それは暗殺であったり交渉であったりと様々だが、個人的に最も他人と親密になれる方法は接続行為だろう。
別名、枕営業。
正義の陣営と讃美されるオートボット勢も、実は高級将校や下士官の間で密かに行われていたりする。もちろん両者の間に恋愛感情など存在しない。
ただ単に互いの利害関係の為に交わされる契りに過ぎない。
言わば火遊びのようなものだ。
所詮一夜限りの睦み事に過ぎない。
それは接続行為をする相手がやり慣れた相手であるなら特にそう感じるわけで。
ならば、彼は。
今目の前で自分に押し倒されて子猫のようなやプルプル震えているブラーは、果たしてこう言う行為に慣れているのだろうか?
いやいやいやこの態度はどう見ても…

「あー…ブラー?一つ聞いてもいいですか?」
「は、はいいぃぃぃちょおかあああん」
「ええと…ちょっと聞きにくいんですけど。まさか、ブラー貴方はその、処女ですか?」
「いやああああああ言わないで言わないで言わないで言わないでください
ーーー!!」
「ぐふっ!?」

恥ずかしさのあまり事もあろうに思いっきり腹パンチをかまされ悲鳴も押し殺せなかった。
しかもタチが悪い事に手加減無用の全力パンチはロングアームをベッドに沈ませるのに十分な威力で。
腹を抱えて痛みに悶絶する哀れな長官のすぐ隣で顔を手で覆いつついやいやいやブラー恥ずかしい!などと喚きながら足をバタバタするブラーがとってもシュールだ。
だが大事な人を殴った事に気付いて我に返ったブラーは跳ね起きた。隣でまだ団子虫になっていたロングアームに慌てて擦り寄る。

「すみませんすみません長官!あのあの大丈夫ですか!?本当にごめんなさい!アタシアタシ思わずビックリしちゃって…」
「い、いえ謝らないでくださいブラー。私こそ性急でしたから私に非があります。貴方の気持ちも考えずに本当にすみません」
「そんな、謝らないでください!」
「大丈夫ですから一旦落ち着きましょう。ね?とりあえずオイルでも飲みましょうか。私が持って来ますよ」
「あ、じゃあじゃあ私が持って来ます!長官は待っててくださいね」
「え?あ、じゃあよろしくお願いします…」

さっきまで緊張感漂っていた空気が一瞬で変わりキョトンとした表情を浮かべるロングアーム。
ブラーは気にしないのか嬉しそうに部屋の棚にあるオイルボトルを漁っている。

「…なんか違うぞオイ」

ボヤキながらのそりと起き上がるロングアームは得体の知れない奇妙な焦りに動揺していた。
最初は初心で無垢な世間知らずの彼など簡単に落とせる自信があった。甘く蕩けるような言葉でこうして高級ホテルへ誘って、その体を意のままに犯し尽くしてやろうとほくそ笑んでいたのに。

「まさか本当に処女かよ…有り得ん。おまけに抱こうとする度に暴れやがってやりにくいわっ」

ブラーに聞かれないように小声で愚痴るスパイの自分がなんだかすごく情けない。
おかしい。こんなはずではない。今まで初日で誘って落とせなかった奴なんていなかった。
しかしブラーは嫌がった。何故だ?確かに彼は処女だが幼子じゃあるまいし。今時操を立てるとか流行らないだろう。
なら、何故。
そこまで悩みながら最終的に行き着いた最悪の答えに絶句する。

「まさかブラーは本当は私が嫌い…とか?」

普段あんなに懐いているのにいざ行為に及ぼうとしたら激しく拒絶されるのが、何よりの証拠ではないか?
ガツンと頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。
まさか自分に落とせない奴がいたなんて、なんたる屈辱…!
ワナワナと震えていたら、何も知らないブラーが暢気な顔でオイルボトルを差し出して来る。

「はいどうぞどうぞ長官!」
「ああ…どうも…」

曖昧な礼を返して力無くボトルを受け取るロングアームの隣に無遠慮に座ったブラーがいっそ清々しいぐらいに憎たらしい。
こうなればもはやプライドの問題だ。
メガトロンを取り戻す前にまずはブラーを落としてみせる。
そうしなければ絶対に自分を許せない気がする。
何に許せないのかもわからぬまま。
そう決意した瞬間、ロングアームのスパイ魂に火が点いた。

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