TFAショックさんが溜息をついた数 | ナノ





ショックさんが溜息をついた回数 1回目(ショクメガ+ブラー)



『ショックウェーブよ。最近お前は酷い顔をしておるらしいなァ』
「は!?」

突然、思ってもいなかった事を主に言われたショックウェーブは驚いて硬直してしまう。
固まった部下を画面越しに眺めるメガトロンは呵々大笑した。普段冷徹なショックウェーブがこんな表情を浮かべるのは極々稀である。
と言うよりも、ショックウェーブの姿は赤い単眼のみで豊かな表情などまるで無かったのだ。だからこそロングアームの姿になった彼の一喜一憂を観察するのはこれでなかなか面白い。
特に自分の事で動揺する様を見るのは。

「あ、あの…酷い顔とは一体どんな顔をしていたのでしょうか?」
『ふぅむ。まああえて言うならば恋に敗れて嘆き悲しむ女の顔と言った所かぁ。今にも泣きそうな顔をしおってからに分かりやすい奴だ。特にその姿はな』
「なっ、なっ、なっに、をっ」

一体何を言われたのだ自分は?
恋?敗れた?悲しむ女のって、そんな顔をしていると仰るのかメガトロン様は!?
絶句したまま口をパクパクするショックウェーブを見たメガトロンは堪え切れず盛大に吹き出した。

『はっはっは!やはり図星か貴様ァ!?』
「メガトロン様!からかわないでください!そんなはずないでしょう!?だいたいこの私に限ってそんな愚かな行為をするはずがありません!」
『くっ、ククク…いやいやすまんすまん。だが我にはそんな顔に見えたのだ。必死で否定するのがますます怪しいぞ?んん?』
「……からかわないでくださいと言いましたが」
『おぉい怒るな怒るな!』

何度言えば気が済むのか。
尚もしつこく聞いてくるメガトロンに流石の忠臣も辟易してブスッとそっぽを向いてしまった。慌てて謝るメガトロンだが、ショックウェーブにすれば肝心の想い人は他ならぬメガトロンなのだ。
その彼にそんな事を言われて平静でいられる自信が無いー
…ふとショックウェーブは違和感に気付く。
この方はいつから他人の浮いた話など気にするようになったのか?
以前ならそんなくだらない話は気にもしなかったはずなのに今のメガトロンはワクワクした表情でしつこくからかってくる。
いや、それどころか性格が多少温和になってきているような…?
畏怖と威厳を兼ね備えたあの他人を寄せ付けぬ王者の風格が今は見られない。
その事実にショックウェーブは愕然とする。
何故だ?急に人が変わったようなー
そこで彼ははっと主が変わった原因に気付く。
ブレイン内に思い浮かぶ姿はあのオートボットーー

『ショックウェーブ?』
「……っは、はい」
『急に黙り込むとはどうした?やはり心当たりがあるのか?相手はもしやオートボットではないだろう「メガトロン様!」………!?』

的外れなメガトロンの予想にショックウェーブはとうとう耐えられず急に椅子から立ち上がった。
滅多に激情を見せない部下にメガトロンは驚いたようにオプティックを瞬かせる。

『ショックウェーブ…?』
「…メガトロン様。先程の言葉を訂正させて頂きます。メガトロン様の言う通り私は好きな人がいるんです。でもなかなか想いを伝えられなくて、きっとこんな酷い顔をしているのでしょう…スパークが苦しくてたまりません。もうどうしていいのか分からなくて…」
『う、ううむ。まさかドンピシャだったとは思わなんだぞ。まさかお前がなぁ。それなのに無神経に聞いてすまなんだ』
「いいえ…どうかお気になさらず」
『で、お前の片思いの相手は一体誰なのだ?』
「…………」

…ああ。
貴方からそんな残酷な事を言われるなんて。
湧き上がる醜い感情をいっそ目の前の画面に拳で叩きつけたなら少しは気が晴れるだろうか。
でもきっと愚かな自分はそれすら出来ないのだろう。
ショックウェーブは凍りつく表情を、鉄の自制心でなんとか弛ませることに成功した。

「…実はその人はもう人妻でして」
『ひ、人妻だとぉ!?おま、それ、人妻に片思いとな!?なんともいやらしい響きだなオイ!?ふりん、うわき…昼下がりに旦那に隠れてあーんな事こーんな事を!?」
『落ち着いてくださいメガトロン様。はぁ…ですから悩んでいるんですよ。どうすれば彼女を私の物に出来るのか。だいたい彼女も彼女で私がこんなに想っているのに一向に振り向いてくれません」
『すごい話になって来たな…それは辛いだろうに』
「ええとても。…メガトロン様、もしも…」

ギラギラとカメラアイを光らせながらショックウェーブは尋ねる。

「もしもメガトロン様が私の立場なら一体どうされますか…?」
『我が?ーーーそうだな…』

部下の問いに腕を組んでしばしメガトロンは悩む。
やがてニヤリと笑みを浮かべ、自信たっぷりに答えを返す。

『我なら破壊大帝の名に恥じぬようその女を奪ってみせるな。だからショックウェーブよ、貴様も悩む事などない。ディセプティコンならディセプティコン流の手に入れ方があるのだ!うじうじ悩んでおる暇があるなら見事奪ってみせい!』
「………は、はい。必ず、必ず奪ってみせます…!」

オプティマス・プライムから貴方を!

歓喜に打ち震える身体を制御するのが難しい。
自分は確かにディセプティコンだ。目の前の主も同じディセプティコン。偉大な破壊大帝。その貴方が奪ってみせろと、臆病な私の背中を押してくれた。
メガトロンは自分の言葉で元気が出たと思ったのか、満足そうにがんばれよと一言残して通信を切る。
通信が終わった後、ショックウェーブはしばらく笑いが止まらなかった。
狂ったように笑い続けるショックウェーブの心は、メガトロンを慕うあまりゆっくりと、しかし確実に歪んでいく。
メガトロンももう少し彼を注意深く見ていればその歪みに気付いていたかもしれない。
しかしショックウェーブの歪みは泥のように溢れ出して止まる気配が無い。
愉快だった。今ならどんな残酷な事も平気で出来るだろう。
そしてその押さえ込めない衝動はディセプティコンならば当然弱いものへ向けられるーーー
例えは、もしも相手が自分を心から慕うものならば。

「ロングアーム長官長官長官!特務調査員ブラー只今地球より緊急帰還しました!あのあのあの大事な話があるとの事でしたが、一体一体一体?」
「やあお帰りブラー!待ちわびていましたよ!」
「ちょ、長官……何をっ!?」

スライドされた扉から現れたのは、ロングアームが地球から緊急に呼び出したブラーだった。
ロングアームは極上の笑みを浮かべながら帰還したばかりの彼を優しく抱き締める。突然の抱擁に驚くブラーの顔は茹でダコのような湯気を出していた。
しかし前から密かに好きだった相手に抱き締められて勿論悪い気はしないブラーは嬉しそうに胸元へ身を寄せる。

「ブラー…貴方にしか出来ない大事な任務を任せたいのですよ。この事は決して誰にも知られてはいけない。だから今夜は二人きりになれる場所でゆっくり話しましょう…」

そんな彼を冷たく見下ろすロングアームはブラーの聴覚センサーへ顔を近づけると痺れるような甘い声でそっと囁いた。
この純粋無垢なオートボットを性の捌け口にするのも悪くない。
自分の虜にして離れないように調教してやろう。
手駒としてな。
愚かなブラーを見下ろしながらショックウェーブはまた笑った。


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