理由。

俺が自分を傷つけていた理由は淋しいから、構って欲しいから、孤独を感じて、与人の方が愛されてるから、生存確認、血が見たいとかそんなんじゃない。

切っ掛けは多分、歩静。

俺がいるっていうのに歩静はずっと暇そうにしていて、シスコンを発揮した後も疲れて無気力になっていた時期が有った。


『歩静ー』
『……』
『歩静!』
『……あ、居たのか』


酷いなって。
俺ずっと歩静の隣にいたのに。


『歩静、俺の事見てる?』
『……』
『歩静、空ばかり見てないで俺を見てよ』
『……輝利、少し一人にしてくれ』


俺は一人になりたくない。歩静の隣が良い。どうしたらいつもの歩静に戻ってくれるの?ねー、歩静?

気付いた時はカッター片手に自分の手首を切っていた。

でも、その傷に歩静は気付いてくれなくて、増やしたら気付いてくれるかなって。

流石に見える所につけると気付いてくれて、歩静は血相を変えて俺の体を見た。

やっと、みてくれた。

でも、気付いてくれた時はカッターで自分を傷つける事が癖になっていたんだよね。もう歩静に気付いて欲しい気持ちとか関係無く。カッターの刃が心地よくなっていた。


『ごめんな輝利。気付いてやれなくて』


ポツリポツリ。
歩静が上の空だったり考え事ばかりしたりシスコンを発揮した後溜息を吐いていた理由を話してくれた。両親の喧嘩、離婚するかしないか。妹の中学受験。それらが自分がいない間に進んでいて自分はどうしたら良いのか解らない。けれど何か出来るじゃないかって考えていたが最終的に呆然としてしまう。

それが最近の歩静だった。

俺もどうして歩静が苦しんでいたのに自分の事ばかり考えていたのか後悔をした。


『輝利は気にするな。輝利は生徒会も有るし、その自傷癖を治さないとな』


歩静は俺の傷口を見つめてそう言った。


結局歩静の両親の仲は元通りになって妹の中学受験も志望校が受かり無事に終わった。俺の自傷癖は治らなかったけどね。


「輝利!」
「なに?」
「その手!」
「あー…まだ切ってないよ。今から」
「駄目だ。何処を切りたいんだ?」
「此処」
「カッターは没収。手首貸せ」
「はーい」


歩静は俺の手首を舐めてキスの跡を残す。
くすぐったいな。もっと欲しい。


「歩静、シていい?」
「お前な……」


結局押し倒してキスから始めました。


「おい、ワンパターン!」
「えー」
「しかも最終回か?」
「最終回にしたら数字のキリが悪くない?」
「悪いし微妙」
「だよねー」
「もう少し頑張ろうか」
「終わりが見えないね歩静」
「そうだな」





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