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「おい、府川。あの転校生、お前になんか言ってたな?聞こえなかったんだが何て言ったんだ」



片付けをしている府川に阿久津は問いかける。それに府川は表情も変えずに答えた。



「ああ、お気になさらず。……ただの牽制です」
「は?」
「……」



府川の返答に阿久津は眉をしかめる。それには答えず府川は荷物をまとめると人見に対し言った。



「遊馬サンの懸念は単なる同族嫌悪でしょうけど、あの御仁が厄介なのはその通りかもしれません。気をつけた方がいいですよ、会長サン、特に秋田サン」
「……、」
「……はあ?何言ってんだ、お前」



府川の言葉に秋田は体を強ばらせ、阿久津は不可解、と言わんばかりの表情を浮かべる。それには答えず、府川は生徒会室の扉に向かった。



「では、用は終わったようですし、俺はこれで失礼します。あ、あの御仁の警護は関賀にやらせますからご心配なく」
「……へえ」



最後の府川の言葉に、人見は少し眉を上げてニヤリと笑う。それは『あえて関賀をあてがう』という意味を人見が理解しているからこその笑みだった。それがわからない阿久津はますます眉をしかめ、秋田は不安そうに眉をしかめる。そんな三人を一瞥した後、府川は生徒会室から出て行った。



×××



……そして、同刻、佐土高校舎裏。……そこには、明らかに生徒とは思えない男たち、――それもナイフやチェーンなどの凶器を持ち、明らかに『一線を越えた』面構えの人間たちが、ある一人の男を前にニヤついた表情を浮かべていた。しかしそんな男たちを前にしても、男は表情も変えず、――いや、男たちを見回した後、楽しげに顔を歪めた。



「こんなつまんねぇ所に随分楽しそうな格好してやがるな?……場所を間違えて迷い混んだ大馬鹿か、それともわざとやってきた大阿呆か。……ま、」



男はそう言うと手をぶらぶらさせながらニヤリ、と凶悪な笑みを浮かべた。



「『不審者は鎮圧』だしなぁ?……せっかくだ、俺の暇潰しの玩具になってもらおうか」
「は、なかなかの度胸だねぇ、にーちゃん?……つーか、ずいぶん場慣れしてるよーだし、ひょっとしてアンタが『薬澤』?俺らさ、ソイツに用があるんだよねぇ。指一本まで切り刻め、って、ある人からの依頼でさぁ?」



ニヤニヤ笑いながら言う男に、男は少し眉を上げ、そして軽く手を振った。



「ほう、俺をご指名か。誰の差し金か知らねぇが、……なら、てめぇら全員、足腰立たなくなるほど犯しぬいても文句はねぇな?」
「は、気取ってんねー兄ちゃん?……つーか、ますますそのツラ、ぐしゃぐしゃにしてやりたくなったぜ」
「……だな」



示し合わせたように男たちは下卑た笑みを浮かべながらジリジリと男、――薬澤に詰め寄る。それを悠然と眺めながら、薬澤は唇を舐めながら男たちに言った。



「久しぶりの乱交か。……おい、てめぇら、全員まとめて来やがれ」
「……ああ!?」
「てめぇらの貧弱な『穴』じゃ、俺に挿れられたら簡単に壊れるだろうからなぁ?せめて『数』で俺を満足させてみろ。……ま、それでも自家発電した方がマシだと思えるレベルだろうがな」
「……てめぇ!」



薬澤の揶揄に、男たちは挑発されて一斉に襲いかかる。それを薬澤はニヤリ、と笑うと緩く構えをとり、男たちに向かって行った。


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