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……そして、朝御飯を終えた後。俺はお母さんと真壁先輩と一緒に食器の洗い物をしていた。



「真言、すまないな。結局家の事をやらせちまって」
「いえ、ほんとに好きでやってますから」
「でもほんと助かるわー。ウチは炊事関係は男どもは本当に役に立たないからね。啓一も啓三郎も厨房には近寄りもしないから。辛うじて京二と京四郎はちょっとはやってくれるけど」
「……まあなぁ、兄貴たちには無理だろうな」



お母さんの言葉に真壁先輩は苦笑する。するとお母さんは俺の方に顔を向けた。



「でもね、真言くん。手伝ってくれるのは嬉しいけど、せっかく遠くまで遊びに来たんだし、どこか行ってきたら?……そうね、うちの近くなら、山なんかどうかしら」
「山ですか?」
「うちの近くには、ちょっとした観光名所があるんだよ。山桜とかが咲く、いわゆる花の名所、って奴がな」



お皿を拭きながら真壁先輩が答えた。



「まあ、山登りって言うほど高い山でもないし、どっちかといえばハイキングに近いようなとこだが。でも今の時期なら桜がきれいだと思うぜ。浅い川もあるから魚釣りもできるだろうし」
「わあ、いいですね」



ハイキング、と聞いて俺はちょっと高揚する。正直、学校行事以外で遠足めいたことをしたことがない俺としては、ちょっと行ってみたい。何より真壁先輩と一緒なんて嬉しすぎる。お弁当持ってー、お菓子持ってー、と思っていると、俺の表情から察したらしい真壁先輩がにっこり笑った。



「よし、じゃあ早速、明日行ってみるか」
「いいんですか?」
「当たり前だろ。……じゃ、明日は少し早起きだぞ」
「大丈夫です!」



勢いこんで俺が言うと、真壁先輩とお母さんはにっこり笑い、お母さんは俺に悪戯っぽい笑みを浮かべた。



「じゃあ、今日は下準備しなくちゃね?真言くん、今日は買い物に付き合ってくれる?お弁当の食材を買わなくちゃいけないでしょ?一緒にみつくろいましょう」
「あ、ありがとうございます」
「うふふ、今日は特売日だから助かるわー。あ、お一人様一点ものの売り出しが今日あったんだったわ。京四郎、お前も来なさい」
「わかったよ」



ちょっと苦笑しながら真壁先輩は頷く。そして、お母さんに駆り出された俺たちは、カート二個分の買い物をして、いろんなものを一杯買い込み、明日に備えたのだった。


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