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注・こちらは2周年記念SSの「真壁さん家へいらっしゃい」の続編になります。こちらを念頭にお楽しみください。



――二日め

朝。目を覚ますとちょうど五時半、いつもと同じ時間だ。目覚ましはセットしてあったがやはり習慣は抜けないらしい。俺は起きると布団をたたみ、服を着替えるとまずは洗面所に向かう。……とりあえず、寝起きのみっともない姿を皆さんに見せるわけにはいかない。せめて顔を洗わなきゃ、とタオルを持ちながら歩いていると、京二さんが竹刀を持って歩いてきた。



「ああ、白河くん、おはよう。早いな」
「おはようございます、京二さん。朝練ですか?」
「ああ、日課だからな。朝は素振りから始まらないと落ち着かん」



そう言うと、京二さんは少し笑う。言われてみると、京二さんの額には汗がうっすら滲んでいる。……ってことは、京二さんは素振りの稽古が終わった後か。さすが師範代、と俺がちょっと感動していると、京二さんは俺を見ながら尋ねてきた。



「しかし、君は随分早いな?眠れなかったのか?」
「あ、いえ、俺はいつもこの時間ですから。ご迷惑でなければ、朝ごはんのお手伝いをしようと思って」
「……」



俺がそう言うと、京二さんは目を見開き、そして少し気遣わしげに俺を見つめた。



「白河くん、君は客人だろう。そんな事は気にしなくていいんだぞ」
「いえ、いつもの事ですし。それに、真壁先輩のお母さんはお料理上手だから、俺、勉強したいんです。俺、寮で自炊してるから」
「自炊?……夜はともかく、朝もか」
「はい、時々弁当も作りますよ」
「……」



俺がそう言うと、また京二さんはびっくりしたように目を見開く。そして深いため息をつきながら言った。



「……立派だな、白河くんは。俺たち兄弟は君の爪の垢を煎じて飲まなければならないな」
「い、いえそんな。好きでやってることですから。それに案外インスタントとか使っちゃってるし、全然大したことないですよ」
「いや、作ろうとする心がけが大したものだ。俺も高校は寮だったがまともに炊事などしなかったからな」



そう言うと、京二さんは優しく俺に笑いかけた。



「君が手伝ってくれれば母さんも喜ぶ。悪いがよろしく頼む」
「はい、ありがとうございます!」



俺が頭を下げると、京二さんは優しくまた笑ってくれた。それにちょっと気をよくしながら、俺は洗面所で顔を洗った後、厨房に顔を出した。



「おはようございます。あの、何かお手伝いできることはありませんか」
「あら、真言くん」



俺が声をかけると、お母さんはちょっと驚いた顔をしたが、すぐに破顔すると優しい声で言った。



「ありがとう、でも真言くんはお客様なんだから。気にしなくていいのよ」
「いえ、俺、いつも炊事してますし。それに、直にお手伝いできれば勉強になりますから。ご迷惑でなければ、手伝わせてください」
「……」



俺がそう言うと、お母さんは京二さんそっくりのちょっと驚いた顔をした後、にっこり笑って言った。



「そう、ありがとう。なら、お言葉に甘えちゃおうかな。 それじゃ、ブロッコリーを茹でてくれる?そこにゆで卵があるから、皮をむいて、……ブロッコリーとゆで卵のサラダにするつもりだから、そちらはお願いできる?」
「はい!」
「お皿は棚の小鉢を適当に使ってね。盛り方は任せるわ、真言くんのセンスに期待してるわよ」
「せ、責任重大ですね」


俺がそう言うと、悪戯っぽくお母さんは笑う。それに擽ったい気持ちになりながら、俺はお母さんと楽しく朝ごはんの準備をしたのだった。

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