F


×××


「……ん、」



……目が醒めてすぐ飛び込んできたのは、見覚えのない白い天井、そして妙にごわごわな白いシーツ、だった。……どこだ、ここ。と僕が思いながら顔を上げようとすると、小柄な生徒が僕の顔を覗きこんできた。



「あ、気がついた?具合はどう?」
「……ここは、」



僕が問いかけると、その生徒はにっこり笑いながら言った。



「ここは保健室だよ。君は僕たちが遊んでたボールにぶつかって気絶したんだ、覚えてない?それで名倉くんが、君をここに。……あ、自己紹介するね、僕は河相伊代、B組。君にボールをぶつけちゃった沢谷くんとはクラスメイトなんだ。沢谷くんは今、君のクラスの先生に言伝てに行ってるから、授業の事は心配しないで。君、C組だったよね?」
「……、」
「本当にごめんね、怪我をさせてしまって。一緒にいた名倉くんも君を心配して付き添おうとしたんだけどね、彼がいると守くんや関賀くんまで『ここに残る』って言っちゃうからさ。とりあえず僕と沢谷くんだけ残る事にしたんだ。でも、後でみんな謝りたいって言ってるから、会ってあげてくれないかな」
「……」



優しげに話す小柄な生徒、……河相くんの口元を僕は凝視してしまう。こんな事態に陥った事より、僕は先程の守くんたちの件で頭がいっぱいだった。口が動いてもいないのに響く声、……あれはきっと、その人の心の声だったに違いない。何がきっかけかはよくわからないが、どうやら僕は人の心を読む能力を手に入れてしまったようだ!これは何よりスゴい事だ。……よし、手始めにまずこの河相くんの心を!……そう思い、僕は河相くんの顔を見つめてしまう。……が、



「……」
「……」



いくら待っても、それ以上声は聞こえてこない。……おかしい、と僕は思わず僕は河相くんの顔を凝視してしまう。すると河相くんは僕の視線にびっくりしたのか、少したじろいだような声を上げた。



「あ、あの、どうかした?僕、なんかおかしい事言ったかな」
「……あ、い、いえ、」
「まだ、頭がぼうっとしてるのかな。ボールがぶつかったとたんに倒れちゃったから、相当ダメージがあったのかもしれないね。もし心配だったら病院に、」



だんだん心配げになっていく河相くんをよそに、僕は彼から発せられた『ボールがぶつかったとたんに倒れた』という言葉に目を見開く。……いや、ちょっと待て。僕はしばらくは起きていられたはずだ、すぐ倒れたはずは。そう思い、僕は河相くんに尋ねた。



「あの、僕、……すぐ倒れたって、」
「うん、沢谷くんのシュートがすごい勢いで当たって、僕たちが駆けつけた時にはもう君は気絶してて」
「……」
「……どうかした?大丈夫?」
「……いや、」



心配げな河相くんに僕は首を振る。……って事は、あれは夢だったのか?……そうだよな、あの守くんがあんなマリモに変な気を起こしてるわけがないよな、……でも、妙にリアルな夢だったような、……



「……」



とりあえず考えてはいけない気がして、僕は考えるのをやめる。でもやっぱり頭の中にはさっき聞いたはずのあの人たちの声がリフレインしていて、……こうして、沢谷くんが来るまで、僕は何とも言えない気分のまま時間を過ごしたのだった。



・END・

王道・相手に触れると心をよめる特殊能力を手に入れた一般生徒が名倉ラブな攻め達の心の中を、たまたま知っちゃう話(エロ)

肝心な人(ヤクザワとか府川先輩とか)がいなくて申し訳ありません。

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