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「ふざけるな関賀!全く君という男は名倉くんになんて破廉恥な!やはり君は、名倉くんに近づくべきじゃない!半径10メートル以内に近づかないでもらおうか!」
「………、」



いつもの穏やかな守くんから想像できないような怒りの表情に僕は思わず硬直する。しかし関賀くんはどこ吹く風、と言った風情でむしろ守くんを挑発するように視線を向けてきた。



「は、なんだよまもりん、いい子ぶっちゃってよー。ならオマエ、レイちゃんモノにできなくていーんだ?レイちゃんは男だからって偏見がないタイプなんだぜ?だからここにいるヤツはみんなチャンスがあるんだ、それでもそんなヨユーぶっこいてられんのかよ?」
「「……!」」
『……なんだって?』
『!マジかよ、ウド!』



その言葉に、守くんと石川くんはギョッとしたようにマリモに視線を向ける。そしてその途端、色んな声が僕の頭に飛び込んできた。



『っ、なんだよウド、なんのかんのとあいつ、男でもいいのかよ!で、でも僕にそんな気があるようには全然、……薄々気づいてたけど、あいつ受ける方がいける口なのか?う、受けしかしたことないけど、う、ウドがその方がいいっていうなら……!』
『……そうなのか名倉くん?それなら俺にもチャンスがあるということか?……ああっ、名倉くんが俺の生涯の伴侶になってくれるというなら俺の人生には一片の悔いもない……!なら今から教会の予約をしないと。海外ならそういう式も挙げられるというし、……本当は神前式がいいんだが今の日本ではさすがにそれも無理そうだからな。海辺の教会で二人きりで式を挙げて、沈みゆく海の光景とさざ波の音を二人で楽しみながら永遠の愛を、……そ、そして初夜は、……ん?初夜まで俺は名倉くんと結ばれる事がないのか?そ、それは少し堪えるような、……いやいや、俺の気持ちが真剣であることを名倉くんに理解してもらうためには結婚までは清い関係、……いや、だがキスくらいは許されるだろう、……だが結婚すればもう名倉くんは俺の、……そうしたらあの美しい肢体に俺の指が、唇が触れる事ができるのか!……』
「……っ!」



怒濤のように聞こえてくる石川くん、そして特に守くんの声に僕は圧倒され目を見開いてしまう。……まさか、こんな事を守くんが言うわけが、……と、僕は信じられない気持ちで守くんの方を見る。が、守くんは紅潮した顔をこっちに向けてるだけで全く口を動かしていない。というか、そう言えばさっきからこの人たちの声、二重音声に聞こえてたような、……って、まさか、



――これが、この人たちの本音……?



「――……、」
「!おい、」
「おい、アンタ、しっかりしろ!」



あまりの事実に僕は頭がクラクラし、さっきの衝撃のせいもあったのか、フッと電気が切れるように気が遠くなるのを感じる。そんな中最後に見た光景は焦った顔で僕を覗きこむマリモと、同じく慌てた顔で僕に呼び掛ける沢谷くんの顔、だった。

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