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「……!」
「「……!」」



いわゆる『お姫様だっこ』をマリモはいとも簡単にしてのけ、思いの外に筋力があるらしいこいつに僕はびっくりする。……っていうか、こんな奴にお姫様だっこなんて冗談じゃない!誰かに見られたらどんな嘲笑を受けるか、……そう思い僕が抗議の声を上げようとすると、それより早く甲高い声が聞こえてきた。



「な、ナニやってんだよ、バカウド!なんでそんな抱え方してんだ、ばっかじゃないの!早く下ろしてやれよ、ソイツだってオマエみたいのに抱き抱えられるなんて迷惑だろ!」
『ふ、ふざけんじゃないよバカウド!あんな冴えないやつにお姫様だっこなんて、……ぼ、僕だってやってほしいのに、……バカバカバカ!』
「……っ!」



最初の強気な発言とは裏腹に最後は駄々をこねてるような声色にギョッとしそちらの方を向くと、そちらには石川類、……一年きっての美少年が立っている。凄い剣幕に僕が呆気に取られてると、その後ろから間延びしたような声が聞こえてきた。



「そうそう、レイちゃんがそんな奴介抱することないじゃん!そーゆーのはさ、仕事大好きまもりんか、超マジメ人間門やんとかにやらせりゃいーのに。つーかレイちゃんはオレだけ介抱してほしいんだけどー」『特にオレの×××とかー』
「……!」



とんでもない最後の一言にギョッとした僕はその声のした方を見る。……と、そこには気だるげな雰囲気のイケメン、一年では人気を守くんと争う西風紀の関賀くんの姿が。……というかコレ、一年人気ヒエラルキーのトップ集団(マリモと石川くん除く)じゃないか!こんな身近では滅多に見られないゴージャスな光景に僕が目を白黒させていると、守くんが関賀くんを睨み付けてきた。



「関賀!怪我人に対しなんて思いやりのない!君には人の心というものがないのか!」
「あるに決まってっから言ってんじゃーん。そんなにレイちゃんに密着しやがって羨ましい。……おい、そこの雑魚、とっととレイちゃんから離れなよ。オレ弱いのかさに来て図に乗るヤツって大っ嫌いだからさー」



ニコニコ笑っていながら目は全く笑っていない関賀くんに僕はゾッとする。……やっぱり噂通り、関賀くんは怖い人だ。恐れ戦いた僕は速やかにマリモから降りようとするが、ナニを考えたのかマリモは僕の頭を引き寄せながら言った。



「バカな事を言っているな、関賀。こいつは怪我人だ、しかも加害者は俺たちなんだぞ。責任を持って早く保健室に運ばなければ」
「澪汰の言う通りだぜ、早く運ばないと。何かあったらどうすんだ」『……つーか、また関賀のヤツこじらせやがって。いい加減澪汰に妙なちょっかいかけるんじゃねぇよ鬱陶しい』



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