B


「……いや、大丈夫じゃねぇだろ。保健室行った方がいいぜ、悪ぃな、オレがノーコンシュート打っちまったせいで。
『やべぇな、大丈夫かこいつ。顔面直撃ってマジ痛えんだよな、何もなきゃいいけど、……あー、マジやっちまった』」
「……いや、ホントに、大丈夫だから、あんまり気にしなくても」



心配げな声には僕は首を振る。するとこの二人の後ろからも、何人かの駆け寄る声が聞こえてきた。



「名倉くん、沢谷!大丈夫か!」
「……おい、大丈夫か、お前」
「……」



……どうやらサッカーをしていた面々がこっちに集まってきたらしい。その頃にはもうダメージから何とか立ち直り始めた僕は、まだ痛む鼻を押さえながら目を開けて、……



「……っ!」



……そして、目の前に現れた光景に僕は呆然とする。そこには、一年のカリスマたち、――朝、うちのクラスの人間がワイワイ騒いでいた人間たちが勢揃いしていたからだ。東風紀のエース、門田桜、万能スポーツマン沢谷爽、マリモ頭のもさい転校生、……そして一年人気ナンバーワン、僕の憧れ守正義。あまりの光景に僕がぼうっとしていると、守くんが僕の顔を気遣わしげに覗きこんできた。



「君、大丈夫か?かなり派手にぶつかっていたようだけど……」
『全く、沢谷が調子づくから一般生徒に被害が。あんな無茶なシュートばかり打つのがいけない。何より許しがたいのは先程の名倉くんへの顔面シュートだ!名倉くんが怪我をしたらどうするつもりだったんだ』
「……、」



マリモと沢谷くんの間にスッと入りこんだ守くんは僕に優しく話しかけながら沢谷くんに毒づく。そのギャップに僕が言葉をなくしていると、守くんは何か勘違いしたのかさらに心配げに僕に話しかけてきた。



「……君、めまいがするとか、吐き気がするとか、……そんな症状はないかい?よければ一緒に保健室に行こうか?
『これは重体かもしれないな、かわいそうに。やはりこういう時こそ副会長親衛隊が動かなければ!校内の平和と安全を守る事こそ俺たちの使命だ!』
「……あ、いや、そんな、」



先程の毒舌から一転、優しげでありながら妙に勢いづく守くんにやっと僕は我に返り丁重にそれを辞退しようとする。しかしそれより早く、マリモ頭の転校生は僕の顔を覗きこみながら言った。



「……大丈夫じゃなさそうだな。やはり保健室に行こう、……立てるか」
「……、あ、……、」
「……ダメージが大きいようだな、……仕方ない」
『脳が揺さぶられた事による軽い脳震盪かもしれんな。そのままにしておくのはまずかろう』



ふざけた格好をしながら妙に冷静な事をマリモは言う。そして、ちょっとそれにまごついてる僕に近づくと、僕をひょい、と担ぎ上げてきた。


[ 53/82 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[topにもどる ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -