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「それで?何か、あいつに変わった様子は。不良じみた風になった、とかは」
「いーや、あいつはいつも通りだったよ。澪奈さんの言う通り、鍛練は欠かしてねぇ。組み手も全く隙がなかったし、……つーか、むしろ前より実践的だ。ってよりか、殺気、……みてぇな、」
「……」
「……あいつ、……喧嘩、してるな。試合じゃねぇ、ルール無用のマジな喧嘩、って奴をよ」



ニヤリ、と笑いながら放った廉の言葉に、廉二は静かに頷く。それは廉や澪奈から話を聞いた時から薄々感づいていたこと、――そして、何年か前、廉や自らも同じように母を不安にさせていたことを思い出したからだ。廉二はつい廉の顔を見てしまうが、それに気づいた廉は、廉二の方に視線を向け、楽しげに言葉を続けた。



「澪奈さんから、あいつが毎日夜遅く帰ってきては、傷だらけになってるって聞いた時にピンと来てたぜ。お前も薄々は感づいてたんじゃねぇのか?……あいつも、昔の俺らみてぇに喧嘩してやがる、ってよ」
「……まあな。あいつは道場じゃ敵なしだったし、……俺たちにゃ、血縁って事でそこまで本気になれてなかったからな。だとしたら、外に敵を求めてもおかしかねぇ。……俺と、兄貴みてぇに」



廉二は、かつての自分たちを思いだしながらそう言う。今では落ち着いている二人ではあったが、中高の頃は道場を飛び出し他流試合に、半ば喧嘩腰で明け暮れていた時がある。そんな廉二の言葉に、廉は満足げに頷いた。



「……最近、他の道場で、顔もよくわからねぇ輩が喧嘩売りに来てる、って噂も聞くしよ。……澪奈さんから話を聞くようになった時期とも被ってるし、……たぶん、そりゃ澪汰の仕業だな」
「……」
「へ、面白くなってきやがったじゃねぇか。俺とお前の代でうちの道場も終わりかと思ってたが、あの廉三の息子が俺たちと似たような事、してやがるとはよ。……相手にしてんのが何なのか知らねぇが、やっぱり血は争えねぇのよ、……『強い奴と戦いたい』っつー、『名倉』の男の本能はよ」



廉の言葉に、廉二は少し眉をしかめる。そしてちょっと首をかしげながら言った。



「……しかし、あの澪汰がな?兄貴がそう言うなら確かにそうかもしれねぇが、あいつ、あんまりそういうとこ見せなかったじゃねぇか。むしろどっか、殴られたがってるようにすら見えたのに」



それに廉は笑いながら首を振った。

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