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「もちろん、俺も、聞いてはみましたよ!……ですが、澪汰はなにも言いはしないし、……まあ、これで、あいつが不登校やら、親に反抗してくるっていうならまだ話しようもあるんですが、……夜遅く帰ってくるだけで、特に不良になったわけでもなし、……あいつの自主性に任すべきだと思うんですがね」



心底困った、という顔をしながら廉三はため息をまたつく。そんな廉三を兄たちは少し見ていたが、やがて次兄の廉二が廉三の肩を叩いた。



「ま、男なら若いうちは羽目はずしたくなる時もあるだろ。あんまり問い詰めると逆効果になるかもしれんしな、……澪汰がグレてるわけじゃないなら、まあ、問題ないだろ。澪奈さんには、俺たちからも言っておくよ」
「……はい、」



廉二がそう言うと、廉三は少しホッとした表情を浮かべる。そして一時間くらい付き合った後、『明日仕事があるので』と言い、五千円を置いてそそくさと出て行った。その、まるで逃げるような後ろ姿を見、廉は苦笑とも呆れともつかない笑みを浮かべた。



「相変わらず、わかりやすい奴だな」
「あいつは昔から俺たちを敬遠してたしな。……ま、俺らのヤンチャのせいであいつもかなり被害を被ってたらしいから仕方ねぇかもしれねぇが」



兄・廉の言葉を受け、廉二も苦笑いを浮かべる。それを聞くと廉も、喉で笑いながら日本酒をあおった。



「……ま、そんな俺たちには娘しかできねぇで、廉三には息子が、……しかも俺らにそっくりな息子ができるたぁ、因果なもんだよな」
「まあな、澪汰のセンスは相当なもんだったからな。あのまま空手を続けてりゃ、さぞ強くなったろうが、……だが、あいつは空手はやめたんだろ?」



廉二がそう言うと、廉は不敵な笑みを浮かべた。



「今日な。……澪汰を、久々に組み手をしないか、……っつって呼び出したんだ。澪奈さんに泣きつかれたってのもあるが、あいつは稽古熱心だったからな、ここをやめても鍛練は欠かしてないと、澪奈さんから聞いてたし、……そろそろ対人戦もやりたくなったんじゃないかと思ってな」
「……」
「最初はあいつを問い詰めようってつもりじゃなかったんだが。だが、……結果的には、問い詰めたのと同じになっちまったかもしれねぇな」



喉を湿らすように酒を煽り、廉は少し笑う。その笑みは楽しくてたまらない、――そう感じているときに見せる笑みとそっくりだった。それに感じるところのあった弟は、廉に尋ねた。



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