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「……まあ、それならやってみてもいいんじゃないか」
「!何を言う、芳野宮!」
「そうです、何を仰るんですか、宮様!」



芳野宮の言葉に、真っ先に飯島副会長が反発し、それに親衛隊たちが追随する。そんな周囲に、芳野宮はさらりと言った。



「こちらに非がある以上、白河真言の言葉に正当性があると言っているだけです。……確かに、最初から部外者を入れるつもりがないなら、あんな役職を作らない事ですよ」



芳野宮がそう言うと、飯島副会長はムキになって反論した。



「……僕は五十川には反対した!こんな愚行をすることはないと!」
「それでも、案を通してしまった以上、それが生徒会の意思でしょう。事ここに至っては、認めるより他、ないと思いますが」



芳野宮はそう言うと、今度は俺に顔を向けた。



「……もう一度聞くぞ、白河真言。この一週間で、君も生徒会に入るリスクがわかったはずだ。今のままでは、君は中傷の渦に晒される事になる。恐らくそれは、聞くに耐えない讒言であったり、身に覚えもない理不尽な言いがかりもあるだろう。味方はきっと誰もいない。それでも君は、生徒会に入るつもりか」
「……一度決めたんだ、やりきる。それに、ダメならダメで、自分で納得してから辞めたい。そうでなきゃ、俺は最初からこの人たちにバカにされた人間だって自分で自分を、そう認める事になっちゃうじゃないか」
「……」
「……だからやる。……とにかく少しだけでもいい、……やらせてください」



俺は深々と頭を下げる。それを飯島副会長は忌々しげに見つめていたが、やがて何も言わずにそこを立ち去った。それに喜志多も続き、後ろにいた親衛隊たちも俺を睨み付けながら出て行き、その場には芳野宮と俺だけが残される。副会長やその親衛隊の厳しい視線に俺がちょっと気後れしていると、近くにいた芳野宮が呆れたような声で言った。



「あの程度の悪意に怖じ気づいてどうする。君が庶務職に無理矢理ついたと知れれば、君へ注がれる視線はこれの比ではない。当然、実力行使をしようとしてくる連中も出てくるぞ」
「……、」
「今ならまだ間に合う。人間の一番汚ならしい部分と向き合う覚悟がないなら、さっきの宣言は取り消すべきだと思うが」



芳野宮はさらりとそう言う。しかしその言葉は、飯島副会長や喜志多のバカにしたような発言とは違うように、……少なくとも俺を少しは心配しているように聞こえた。それにちょっと救いを感じつつ、俺は芳野宮に言った。



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