B


「あいつは芳野宮叶っていってねー、生徒会書記にもう内定してんだよ」
「え、……入学してすぐなのに?というか、選挙もしてないのに?」



喜志多の言葉に俺は驚く。……普通、生徒会役員って選挙で選ばれるもんじゃないのか。俺が首を捻ってると、喜志多は肩を竦めながら言った。


「カノカノは特別。現書記がね、カノカノが入ったら自分は書記職を辞退してカノカノに譲る、って言っててね。入学と同時に書記職を降りちゃってさ。後釜はカノカノしか許さないって譲らなかったから、暫定で書記はカノカノなんだよ。持ち上がり組で誰もそれに異議を唱える子もいなかったしね、選挙したって結果はわかりきってるからね、だから最初から書記扱いになってるのさ」
「……な、」
「ま、とにかく、アルパカくん、辞退すんならしてもいーよ、コレはカイチョーの『遊び』みたいなもんだからさ。とりあえず生徒会会合は一週間後だからさ、それまでにどーするか決めときなね」



いつのまにか俺を『アルパカくん』なんて妙なあだ名をつけて、喜志多は去って行った。その時は、喜志多といい芳野宮といい、妙に鼻持ちならない奴らだなぁ、なんて思っていたのだ、……



……が、あの時からまだ一週間しか経っていないのに、俺はこの学校における『生徒会』という存在の恐ろしさを思い知らされた。新入生歓迎会が終わった途端、俺は回りの連中からもみくちゃにされた。羨ましい、ありえない、辞退しろ。そんな声に圧倒され、俺は逃げるように会場を後にした。そしてそれは、初の生徒会会合日である今日まで続き、学校では俺は気の休まる場所はなかった。辛うじて、寮では同室の初狩が同じ外部生で生徒会に興味がなかったからよかったものの、これで同室者まで内部生だったら目も当てられないところだったろう。



……とにかく、俺はここに来るまでに決意を固めていた。――『辞退』を。こんな状態のままでいたら、俺の精神が参ってしまう。とにかく、礼儀として顔だけ見せて帰ろう、俺はそう決め、そしてその決意を目の前の親衛隊隊員も察したのか、特に何も言わずに俺を通してくれた。でも、やっぱり視線はかなり険しかったけど。それに大きくため息をつきつつ、俺は目の前にそびえ立つ大きな扉を見つめる。



――この中に、生徒会役員が。



そう思うと俺は思わず緊張する。この一週間で俺は生徒会役員のなんたるかを思い知ってる、それを改めて目の前にするのはプレッシャーだ。しかし、これは今日だけ、……今日だけ、と念じ、俺は思いきって扉を叩いた。



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