A



「申し訳ないけど、オレちょっとまこっちゃんに用があるからさ、ここで失礼させてもらうね」
「ええ!?どうして、初狩くん?」
「ちょっと風紀の取り締まりにひっかかってさ、その件で。……大した話じゃないから、すぐ終わると思うけど。あんまり聞かれたくない話でもあるし。悪いけど、ここで失礼するね?」
「……、」



初狩がこう言っても彼らは不服そうだったが、有無を言わさぬ初狩の微笑に、諦めたのか彼らは初狩を置き去っていく。去り際、やっぱり俺のことをギロリ、と睨んでいったが。それにため息をつきつつ、俺は初狩に言った。



「相変わらずモテモテだな。ファンみたいなの連れちゃって」
「アハハ、単にみんな、ミーハーなだけだよ。でも、さっきから変にベタベタまとわりつかれてたからさ、まこっちゃんがいてくれてよかった」
「……そのせいで俺は針のムシロだぞ。後ろの奴らの視線、マジで突き刺さるみたいだったんだからな」
「ごめんごめん。ま、あの子たちにはちゃんとフォローいれとくから、まこっちゃんには迷惑はかけないよ。ね、それよりまこっちゃん、オレと一緒に回らない?たまにはこういうのもいいでしょ」
「……そうだな」



ニコニコと笑いかける初狩に、俺も思わず笑みを浮かべる。初狩とはクラスが違うから一緒の授業を受けるなんて事はなかったから、こういうのでも二人でできたら楽しそうだ。俺は頷きつつ初狩のファイルを覗きこんだ。



「よし、一緒に回るか。お前、どの種目やった?」
「オレはボール投げと50メートル走かな」
「お、50メートル走は俺もやったぞ、どれどれ、……」



何か興味を引かれ、オレは初狩の紙を覗きこむ。初狩がスポーツ万能なのはわかってるが、走るのが速い、というイメージはあまりない。ひょっとしたら俺の方がちょっとくらい速いかもー、なんて淡い期待を俺は一瞬抱いたが、初狩の記録が6秒2と、俺より1秒速いのを見、俺はそれは見なかった事にして体育館のステージを指差した。



「……よし、じゃあお前がやってない前屈をやるか。今なら待ち時間なしでできるみたいだし」
「いいけど、……そういえばまこっちゃんは50メートル走の結果はどうだったの」
「……別にいいじゃん、そんなの。さー、早くやろうぜ、俺が記録を取ってやるよ」
「はいはい」



思わせ振りに笑う初狩は、どうやら俺の思惑が透けて見えているらしい。それが面白くなく、俺は無理やり初狩を体育館のステージの上につれていく。……一年同室だったが、初狩の体が固いか柔らかいかは正直印象にない。だからこそ、ひょっとしたら初狩体固いんじゃ!……と、俺は密かに期待したのだ、……が、

[ 33/82 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[topにもどる ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -