B


終わってみれば、やっぱり初狩の記録は平均以上。しかも初狩は、俺としゃべる事の方を優先させていたから、これが実力ってわけではないだろう。かくいう俺は頑張ってはみたがいつものように平均オブザ平均。……まあ別にいいんだが、全てにおいて優れた男が脇にいるとちょっと引け目を感じてしまう。しかしそんなトコには気付かないのか、初狩はにこやかに言った。



「どう、まこっちゃん?オレちょっとはやるでしょ」
「……そうだな」
「あれー、気のない返事だなー。オレまこっちゃんが見てるからと思って頑張ったのにー」
「俺に喋りまくりかけてたその口でよく言うな。……まあいい、次行こうぜ。後、体育館でやるものっていったら何だっけ」
「反復横跳びと垂直跳び、……かな。あ、オレ握力やってない」
「あ、じゃあ先、そっち行くか。俺はもう終わってるからさ、記録取ってやるよ」
「そっか。じゃ、リンゴを素手で握り潰すオレの握力をまこっちゃんに見せてあげるよ」
「はいはい」



腕に力こぶを見せてくる初狩に苦笑しつつ、俺たちはさっきの握力計測ゾーンに引き返す。すると光峰が目ざとく俺を見つけまた茶化してきた。



「おー白河、まだ来年には程遠いと思うけど。それともリベンジに来たのか?」
「違うよ、やるのは初狩。記録俺取るからさ、計測器貸してくれ」
「え、初狩?」



俺がそう言うと、光峰は目を丸くしながら初狩を見、そして納得したように頷いた。



「あー、今日は三クラス合同だもんな。しかし初狩、お前相変わらず白河と仲いいんだな」



光峰はじろじろ初狩を見つめる。すると初狩はにっこり笑いながら俺の首に腕を回した。



「そりゃあ?まこっちゃんには一年間お世話になったしね?今や親友、……いや、家族みたいなもんっしょ」
「おい、初狩」



俺にくっついた途端、遠巻きにしていたさっきの奴らの視線が突き刺さるのを感じ俺はため息をつく。……全く、あいつらがこっちを気にしてないわけがないのに余計なことを。しかしさすがに初狩もわかってるのだろう、すぐに離れて肩を竦めた。そしてそんな俺たちを前にした光峰はちょっと感心したように言った。



「へー、初狩って意外に友情に厚いタイプだったんだな?」
「あれー、光峰くん、意外って何?オレ、そんな薄情そうに見える?」
「あ、いや、……それは」



初狩の言葉に、光峰はちょっと焦ったように口ごもる。すると初狩はにっこり笑いながら言った。


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