体力測定テスト(嘘から)


この話は本編開始の二年四月ごろの話になります。



「よーし、白河もういっちょー!カモン、カモン、カモーン?」
「……ぐぬぬ」
「よーし行け、後もーちょい!行けえ、根性を見せてみろー!」
「お、まえなあ、……笑かすな、よ!」



力を入れすぎてプルプル、と震える腕に握りしめた測定器。何とか記録を伸ばそうと俺は踏ん張るが、横で茶化してくる記録担当の光峰に笑いをこらえるのに俺は精一杯だ。とりあえずこれ以上は無理ー、ってとこで手の力を抜くと、光峰は記録をさっと書いて笑いながら俺にファイルを差し出してきた。



「ほい、ごくろーさん白河。超・平均点だねーさっすが」
「悪かったなー、これでも去年よりちょっとよかったんだぞ」
「へー、そりゃおめでとさん。ま、来年もお越しをお待ちしておりまーす」
「……なんだそりゃ」



最後も茶化してくる光峰に苦笑を返しつつ、俺は妙に活気づいた体育館を見回す。



今日の体育は体育測定テスト。要はさっきの握力測定やら、50メートル走やら、っていうアレだ。今日は特別にA〜C合同って事もあり、なんだかいつもと様子が違う。友人同士で結果を聞きあい一喜一憂してる姿は結構楽しそうでほほえましい。俺も体育は好きだし(上手いかどうかはまた別だが)この測定テストは結構楽しみにしていた。実際、ボール投げなんかは去年より30センチ記録を更新したんだ。さて、次はどこにしようかな、と俺が体育館内を見回してると、後ろから軽く声をかけられた。



「や、まこっちゃん。どう、結果は」
「ああ、初狩」



そこには初狩がいて、何だか楽しげに俺を見つめている。そして相変わらず、後ろには取り巻きみたいな奴等がいて、俺と目が合うとギロリ、と睨まれた。そんなのはいつもの事だから無視しつつ、俺は話を続けた。



「ま、ぼちぼち?全部まだ終わってないけど、昨年越えは確実、ってとこかな」
「へえ、すごいじゃん」
「いやいや、そういうお前はどうなんだよ」
「まー、それこそぼちぼち?それよりさ、まこっちゃん、一人なの?クラスの友達とかは?」
「ああ、光峰とかは体育委員だから準備とか仕切りで忙しいらしくてさ。倉持も村瀬と行っちゃったし、しょうがないからボッチ計測だよ」
「へえ、……」



初狩は俺の言葉を聞いて一瞬目を丸くした後、にっこり笑って後ろの生徒たちに言った。



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