V.Sモード(生徒会長×風紀委員長)


……さて、今の俺の状況を説明しよう。今俺がいる場所は生徒会室、周囲には誰もいない上、何故か外から鍵がかけられている。窓を開けることは容易だろうがここは4階、ベランダがない上に下はコンクリートの道路、飛び降りる事は不可。というより今の俺。生徒会長用のデカい机に仰向けに倒され両腕を押さえつけられた禁錮状態。身動きは困難、何とか右脚は動けそうだがまあ、相手との力の差があまりないから抵抗も無駄と言えるに違いない。つまり、この状況から逃げられる確率は非常に低い。……………まあ、つまるところ。


……OK、今回は俺の負けだ。



忌々しいが事実だ。再度ため息をついた後、俺は俺の上にのしかかる男を冷たく見据えつつ少しだけ頷いてみせる。するとこいつも俺が諦めたのが分かったのだろう、ニヤニヤと嫌味ったらしい笑みを浮かべながら俺の顔を覗きこんできた。


「へっ、今回は俺の勝ちだなあ、水村ぁ?」
「……ふん、」



勝ち誇った顔がまた忌々しいが、平静を装いつつ俺は頷く。すると男は満面の笑みを浮かべながら俺の拘束を解いた。


「はん、……やっとテメェの無様な姿、見てやれたぜ….…!どうだ少しは見直したか、『剛腕生徒会長』と名高い火野剛様をよ?」
「……12回目のチャレンジでやっと成功した男に言われたくないが」



起き上がりつつ少し乱れたネクタイを直しながら俺がそう言うと、男、ーー火野は少し肩を竦めながら言った。


「よく言うぜ、メジャー系武道全般『段あり』が。つーか、そんな武道マニアのテメェから運動神経だけで立ち向かう俺様のセンスを誉めるとこだろ、そこは」


かなり不服げに火野は言う。が、俺は眼鏡を上に上げつつ奴を一瞥しながら言った。


「馬鹿を誉めるとますます馬鹿になるだろうが」
「お、じゃあ少しは誉める気になったって事か?つーか、これでもう俺が単独行動しても文句はねーって言うことだよな」


俺の嫌みな言葉にもめげず、火野はニヤニヤ笑いながら俺の顔を覗きこむ。その心底ムカつく顔をにらみつけつつ、俺はため息をつきつつ頷いた。


「……まあな」
「なんだよ、不服そうだな」
「当たり前だ。何度も言ってるだろうが、この学校で生徒会長が親衛隊をつけない上、何の護衛もつけずに校内を闊歩するなどありえん。まだ俺の言うことを理解できていないのか」
「あーあーそうだったな?けどよ、テメェを一回でも完封できたら、もう俺には口出ししねぇって約束だったよな。テメェこそ俺との約束を理解できてなかったのかよ」


火野はニヤリ、と俺に笑いかける。その、整ってはいるがやはり忌々しい顔に俺は心底うんざりしながら、こいつとの『約束』を思い出していた。


[ 70/82 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[topにもどる ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -