A


……そして、ホワイトデー当日。やはりというかなんと言うか、その日は朝から妙な熱気に包まれていた。



「よー、石川、河相。バレンタインにはサンキュ、これは返しな」



B組に到着すると、朝練で先に行っていた爽はもう来ていて、同じく先に来ていた伊代や石川に返礼品を渡していた。伊代は青い紙の袋を受け取りながらちょっと恐縮した様子で言った。



「あ、気にしなくてよかったのに。大したものじゃないから」
「いや、こっちもマジで大したもんじゃねぇし。小腹がすいたときにでもつまんでくれ」
「そう?じゃ、……ありがとう」
「ほら、石川も」
「……」



少し照れた様子で、伊代は紙袋を受けとる。そして石川は、なぜか俺の方をじっと見ながらそれを受け取った。なんだ、と思っていると、廊下の方から聞き覚えのある声がした。



「ああ、……河相、石川、ちょっといいか」
「おはよう、名倉くん!河相くん、石川、申し訳ないがこっちに来てくれるかい」
「ぐんもーにーん、みんなー」
「おはよー」
「あ、門田くん、と、守くんに、志野くんに多田くん」



そこにいたのは門田とマモリ、そして袋をいっぱい抱えた志野と多田が立っていた。マモリは志野の持っていた袋を二つ持ち、伊代と石川に言った。



「バレンタインの時はありがとう。ささやかながらこれはお礼の品だ」
「こっちは僕たちからー!昨日クッキー焼いたからお裾分け!名倉くんも沢谷くんも食べてー!」



マモリは金色の紙袋、志野と多田はピンク色の包みの、赤いリボンがついた袋を伊代と石川、そして俺と爽に渡してくれた。それに伊代は恐縮しながら言った。



「ま、守くん、こんな上等そうなの、悪いよ。志野くんたちも、僕のなんて大したことなかったのに」
「いや、気持ちだよ、これは。いつも河相くんにはお世話になっているから」
「僕たちのも気にしないでー!お茶の発表会の練習も兼ねてるから!さ、どーぞどーぞ!」



マモリは余裕に満ちた笑みを浮かべ、志野たちもにこやかに包みを伊代たちに渡す。その勢いに押され「じゃ、じゃあ、ありがとう」と言いながら伊代はそれを受け取り、爽は「サンキュ、じゃ、部活の合間にもらうわ」と笑顔で受け取り、石川はやはり俺の方を見ながらそれを受けとる。それに首をかしげていると、今度は門田が咳払いをしながら黒い紙袋を渡した。



「……では、俺から。河相、石川、これを持っていけ」
「わ、か、門田くんまで、本当に、気にしなくてもいいのに」
「そうはいかない、礼には礼を持って返さねば。とりあえず受けとれ」



そう言い、門田は半ば怒ったような顔をしながら包みを差し出す。それに「あ、ありがとう、門田くん」と言いながら伊代はそれを受け取る。それを見つつ、俺もカバンに入れておいた返礼品を取り出した。


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