B


「……では、俺からも返礼品を、」
「「……!」」



俺がそう言った途端、マモリ、そして石川が殺気だった視線を俺に向ける。それに心ならずもたじろいでしまったが、とにかく渡してしまおうと俺は五個、袋から取り出した。



「伊代、石川、マモリ、志野、多田。返礼だ。大したものではないが食ってくれ」



俺がそう言うと、真っ先にマモリが俺の手ごとクッキーの箱を握りしめながら言った。



「名倉くん!気にする事などなかったのに!しかし君からの心遣いは確かに受け取ったよ!賞味期限ギリギリまで鑑賞してから食べさせていただくよ!」
「……いや、早く食べてくれ、大したものではないから」
「わー、名倉くんからもらえるなんてレアすぎー。僕も期限ギリギリまでとっとこうかなー」



マモリの言葉を受け、志野もにこやかにそんな事を言う。そして石川は、俺の包みをジロジロ見ながら肩を竦めた。



「は、さっすがウド、全員の中で一番センスない!コレ、購買で売ってたヤツじゃん。中身は『ステテコおじさんのクッキー』じゃないの」
「ああ。今週の日曜は花形先生の手伝いで外出できなかったんだ。すまんな、予想できるモノで」
「!何を言うんだ名倉くん、あのメーカーのクッキーは美味じゃないか!ありがとう、とても嬉しいよ」
「……重ねて言うが、大したものではないから早く食えよ」



無駄に熱弁を振るうマモリに少し辟易しつつ、俺はとりあえず返礼品を配り終える。すると突然、廊下の方からやはり聞き覚えのある声がした。



「やー、レイちゃんハッピーホワイトデー!お返しをもらいに来たよー!」
「……やはり来たか」



それはやはり関賀で、満面の笑みを浮かべながら俺に近づいてくる。その様にクラスの連中は驚いたような表情を浮かべどよめきを上げ、マモリと石川は不満そうな表情を浮かべるが、関賀は全く気にせず俺に言った。



「さー、レイちゃんオレにお返しちょーだい!キスくれるって約束したよね!」
「な、……き、貴様!何を言ってる!そんなうらやま……いや、不届きな事を許すわけがないだろう!」
「そうだ、ふざけんなよタチ食い!オマエはいつもいつもウドにおかしなちょっかいかけやがって……!オマエにはいくらでも相手いるだろ、そーゆーのを引っ掻けろよ!」



関賀の言葉にマモリと石川が吠える。が、関賀はぐいぐいと構わずに「キス、キス」と俺に言ってくる。仕方ないので俺は鞄の中に入れておいた袋を関賀に渡した。



「わかった。……仕方ない、関賀、俺の秘蔵品だがこれをやる。実家から送ってきたキスの干物だ。うまいから味わって食えよ」
「いや、それ違うだろ、澪汰」
「そうだよレイちゃん!俺はレイちゃんからのチューが欲しいんだってー!」
「ふざけるな関賀!名倉くんからモノをいただけるだけありがたいと思え!」
「そうだ!文句言ってんじゃないぞ、タチ食いのくせに!オマエなんか安物の魚で十分だよ!」
「いや、……何気に干物は高いぞ。むしろそちらの方が価値があるだろう」
「……いや、門田くん、そこを突っ込むとこかなぁ?」



俺が差し出した袋に、爽は冷静に突っ込みをいれ、関賀はまた騒ぎ、それにマモリたちがまた騒いで、門田と多田がぼそりと呟く。……こうしていつものように、ホワイトデーも騒がしく始まり、騒がしく終わったのだった。



・END・

一年組のホワイトデー(関賀中心)

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