ハッピーホワイトデー


――今日は三月十三日、いわゆるホワイトデーでの前日、である。バレンタインにチョコをもらった者にとっては、その反動として出費が大いにかさむ日、そしてチョコをやった者にとっては負債の回収の日だ。そして俺の周りの人間はどちらかといえば反動の日であるらしい。その筆頭であるマモリはもう前々週の日曜日に返礼品を何個も買い込み、爽や門田も今週の日曜には財布を睨み付けながら当日の品を物色していた。俺も伊代や石川たちにチョコを貰っていたので、とりあえず夕飯を買いがてら購買に来ていたのだ、



――が。



「レイちゃーん、こんばんはー!さーて早速だけどクエスチョン!明日はなんの日でしょーか!」



俺が弁当売り場で品物を物色していると、どこから現れたのか関賀がいつものハイテンションで俺に話しかけてくる。その期待に満ちた表情から、俺は関賀が何を聞きたいのか何となく想像できたが、敢えて答えずこう言った。



「さあ、なんだ」
「アハハ、惚けちゃってレイちゃんてばかわいーなー!そのクッキーの箱がすべてを物語ってるじゃん!」
「……」



さすがに関賀はめざとい。俺が返礼にと入れておいた包装されたクッキー(なぜかうちの購買にはバレンタインにはチョコ、ホワイトデーにはクッキーがあからさまに贈答用に包装されてあった)に視線を向けニヤリと笑う。そして視線でクッキーの数を数えながら言った。



「ブスネコ、スパイ君、女装マニア、オマケ君、マモリん、狂犬、ペルシャ猫副、――てなもんかな?いやあ、レイちゃんも結構やるなぁ。……でも、」



そう言うと、関賀は8つあった同じ包装のクッキーの箱をひとつ取り上げた。



「オレはこーいうのいらないから。オレの分は買わなくていーよ。オレ自身も寄越したモンに返すつもりねーし」
「ならなぜ俺にチョコを寄越した」
「そりゃー、オレが常にレイちゃんを愛してるってことをわかってもらうためにさ」
「毎度くどくど言われているんだ、認識はしているが」
「でも、カタチにした方がより実感できんじゃん!オレ返しはしないけど、やる方のキモチはわかってるよ?」
「なら、苦手なモノを貰う方の気持ちも推察してもらいたかったが」
「それはそれこれはこれー。ま、そーゆー事で、当日はレイちゃんからのキスでいいからねー!」



そう言うだけ言い、関賀は「じゃ、名残惜しいけどオツトメの時間だからー」と言い去っていく。そんな関賀を見やりながら、俺はカゴの中の商品を精算すべくレジに向かった。


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