不意打ちのデレにやられます('∀'●)テヘッ

幼馴染みのホッペは柔らかい。
だから何だと言われれば一言、つんつん突いてフニフニ摘んで最終的には噛み付きたくなる訳だ。

魅惑のホッペだな、本当に。



「いい加減にせんか」
「あたっ!」

がつん、と頂頭部を凄まじい衝撃が襲った。目の前が真っ白になる様なアレだ。凄い、女の平手打ちを受けても、此処まで目玉から火花が散った事はない気がする。

「って、和英辞書?!和英辞書で殴ったの?!」
「ああ、角で殴った」
「バイオレンス!」

何て小悪魔さだろう、そこも好きだ。余す所なく好きだ。俺も相当目が眩んでる気がする。まぁ、高校に入るまでは此処までアレじゃなかったけどな。
初勃起のネタが裕太だった思い出も、今になれば俺GJと思う。付き合う彼女付き合う彼女、うっかりユータって呼んで振られてきたけど。普段ならまだしもさ、ベッドの中はアウトみたい。

「んだよ、ちょっとホッペ舐めようとしただけだろ」
「黙れ、覚えたての論法を忘れる」
「舐めようとしただけじゃん!服の中に手ぇ突っ込んだ訳じゃねぇだろ!脱がせたいけど!」
「三段論法か」
「舐めない舐めなければ舐めなく舐めなかった舐めなかろうか!」
「何だそれ、形容詞活用のつもりか?中学からやり直せ」

ぐっ、俺理数系だもんね!
国語が出来なくたって困らないもんねっ!へへん!

「いい加減帰れ、零時回る」
「う」

幼馴染みが家に来てるって言うのに、何この扱い!裕太は母子家庭だから、おばちゃん帰って来るまで寂しくない様に一緒に居てあげようって言う健気な俺に!その仕打ち!

「と、泊まるもん」
「は?」
「泊まる泊まれば泊まらせよ!」
「何活用だそれ。別に良いけど、今更だし」

はぁ、なんて色っぽい溜め息吐いちゃってこんにゃろめ。
いつも何時まで勉強しちゃってんの。俺に何の相談もなくうちの馬鹿妹の家庭教師なんかやって、帰ってからも勉強勉強勉強どんだけ引き籠もり体質なんだこんにゃろめ。たまには外に出ろ!俺とデートしろ!最終的にはホテルに泊まれ!

「なー」
「泊まっても良いが邪魔をするな。…be動詞が此処に…」

今度は英語かよ。
教育学部って全教科やってんだったよな。カリキュラムあんま被らないし。同じ大学だっつーのに!

「抱き締めたい」
「黙れ気が散る。…関係代名詞は…whichか?」
「はぁ。違ぇよ、指示語を指すんだからこの場合dogの単数形heを修飾すっから、whichじゃなくてwhoだろ」
「あ。そうか、うっかりしてた」

ちょっと英語苦手なんだよな、そんな所も可愛い。舐めしゃぶりたい。あわよくばしゃぶらせたい。
思っても実行出来ないけどな。健気な俺。

「ユータぁ、何か欲しいもんない?」
「Sandmanで睡魔、…は?」
「行きたい所とかさ」
「何だ急に」
「もうすぐ誕生日だろ、お前」

きょとん、と。無防備に見つめてくる目が可愛い。俺の前だけ眼鏡外すとことか。同じ幼馴染みでも馬鹿妹の前じゃ外さない癖に。童顔気にしてんの。可愛いだろ。

「別に、何も」
「良いから良いから。授業課題で始めたFXが当たって、リッチなんだって俺」
「エフエックス?何だそれ」
「個人投資家なの。株だよ株」
「株?そんなのいつの間に…」
「去年から。ちょくちょくパソコン弄るだけだけど」

朝イチで経済新聞とか読んじゃってる俺、こう見えて甲斐性あります。いつか裕太を養う為に今から頑張らなきゃだもんな。

「凄いな…」

感心した、ってありあり判る声に照れ臭くなった。ちょう可愛い。
昔はいっつもこんな顔してたのになぁ。いつからクーリッシュ気取り出したんだっけ。ホラー映画観ても泣かなくなったし。お父さんは悲しいです。

「だから、何か決めとけ」
「でも…」
「大丈夫だって、ちょっとくらい高いもんでも余裕だからよ。遠慮すんな」
「う、うん」
「何でも良いぜ」

何か小腹減ったなぁ、とコンビニにでも行く事にする。ボロくはないけど狭いアパートは男を狼にするバイオレンススポットだからな。
ツンデレ裕太のデレを見れただけでも良しとしよう。

「何か夜食買ってくっから、しっかり勉強してな。未来の先生」

コクリって頷いた裕太の仕草だけで暫くオカズには困りそうにないし。はぁはぁ。


「た、たっちゃん」

小さな玄関に並んだ28cmのスニーカーと26cmのスニーカー、懸賞で当たったとか健気な嘘を吐いた俺が初稼ぎで買った去年の誕生日プレゼントだ。
ナイキの色違い。買った時より履き崩れた俺と、あんまり汚れてない26cmに擽ったい気分もちょっとだけ。

たっちゃんって、中学まで裕太が使ってた俺の愛称じゃんか。

何事か、と右足に通したスニーカーの紐を結び掛けた体勢のまんま硬直したら、


「り、林泉寺行きたい。…日帰りで良いから」
「米沢?」
「上杉謙信公の墓、行きたい」

こんな時まで勉強姿勢かこんにゃろめ。
でもまぁ、


「二泊三日以外却下。」
「は?」
「たまには勉強忘れて、温泉で疲れ癒そうぜ」

愛する幼馴染みには無条件で弱いのよ、俺。

「良さそうな旅館リザーブしとくから、楽しみにしとけ」
「…ありがと」
「いえいえー」

露天風呂は外せないからな!





とか言ってたら当日風邪引いた俺。
いつも以上に冷ややかな裕太に泣きながら「一緒にお風呂入って!」ってお願いしたら「黙れ」と言われました。


ドンマイ!


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