可視恋線。

疑惑と謝罪と仲直りのバナナ

<俺の嫁は豆類最強の刺客>




「うわーん。ごめんね、朱雀先輩っ」
『謝って許すと思ってんのか』

超不機嫌な朱雀先輩の声に、俺の股間は益々縮こまった。元々大きくないのにね!


えへへ、朱雀先輩の一口サイズ。
って、何を言わせるのかな!セクハラだよ?!

はい、反省してます。


『責任取って、嫁に来い』
「それは卒業してからねっ」
『テメェ…本当に悪いと思ってんのか!俺の入学は9月だぞ!ヤりたい盛りの18歳舐めんなよ、殺す気か!』
「悪いと思ってるよ!俺だってヤりたい盛りの17歳なんだからね!強く生きて!テストあるしGWは無理かもだけど、夏休みには遊びに行くから…ねっ?」
『してもねぇ浮気疑われて、テスト勉強なんかのお陰で7月までお預けか…。お前は悪魔だ、小悪魔じゃねぇ、ただのキョンシーだ…』

オメガウェポンが泣いてる、って。
遠い目してる朱雀先輩は夜遅くまでお仕事で、何かやつれてた。それを見た俺はただでさえ泣きそうなのに、テレビ電話じゃ触れないんだよ。

「うう、朱雀先輩、やつれててもかっこいい。俺キョンシーになったら勉強しなくて良いかな?左席辞めても良いかな?!」
『馬鹿野郎、男が一度やると決めたらやり通せ…!兄貴が言っただろ、石英の親父さんが』
「先輩は父ちゃんに影響され過ぎだよ。何なの、その派手な真っ赤な豹柄のシャツ」

ヤクザさんなの?
父ちゃんの一張羅も派手な色のシャツなんだよ。絶対同じ所で買ってるよね。六本木のチョイ悪親父御用達のお店だよね。

似合ってるけど。

『はっ、馬鹿には豹と虎の違いも判んねぇか。もう良い、パンツ脱いで穴見せろ。おまめ以外と話す事はねぇ』
「ひど!」
『俺はおまめと浮気してやる。精々指咥えて見てろまめこ!エロく指しゃぶってろ!』
「謝って駄目ならどうしたら許してくれるのっ?うぅ、昨日の小テスト…頑張ったけど…地理以外は平均55点だった!ちゃんと見せたら許してくれるっ?」
『その件については俺や兄貴が許しても…真弓姐さんがだな…』
「うわーん、母ちゃんには言わないでぇ」
『判った、言わないから泣くな』

浮気疑惑は俺の盛大な勘違いだった。李先輩が教えてくれたから、俺はこうして涙ながらに謝ってるわけ。
お陰様で朱雀先輩は判り易く怒ってるんだけど、今回は完全に俺が悪いよね。半ば本気で朱雀先輩の所に飛行機で突っ込むつもりだったし。色々あってすっかり忘れてたけど。

「うっうっ、ごめんよぅ、朱雀先輩が浮気するなら俺もするー!ブラックタワーと浮気してやるー!」
『やべ、鼻血出た。ちょっと待て、ティッシュティッシュ』
「モテる先輩が悪いんだよっ、バーカ!あっちこっちで悪さしてた癖に!何だよ、謝ってんだから許せよ!男らしくないぞっ」

あ、これ逆ギレかも?
てへへ。

『舐めてんのか!お前が乗り込むっつーから待ってりゃ忘れてましただと?!男が一度突っ込むっつったら突っ込んで来やがれ!ケツの穴まで広げて待ってやらぁ!』
「あ、ごめんなさい?それはお断りしますです。INするよりINされたい派なので」
『ごめんで済んだらスカイプなんざ要らねぇんだよ…!』

朱雀先輩が浮気したと思ったのが昨日。
だけどその後に工業科の子が悪さしてたでしょ?ほら、特許がどうだのの、アレ。
流石にチンコちょんぎるのは可哀想だったから、山田先輩と隼人様にお手伝いして貰って、二度と悪い事はしない様に懲らしめたんだけど。

工業科の皆にそれを通達したり、工業科の先生から謝られたり、食堂の左席ランチメニューを考えたり、中央委員会役員の仕事態度を採点して評価したり…あ、これは左席会長の日誌みたいなものなんだ。日替り左席ランチのメニューは俺の好み次第で、去年までは遠野先輩と紅蓮の君が考えてたんだって。
801円で儲けが出る様に一生懸命考えたけど、判んなくなっちゃって、最上学部の声楽科に進学した錦織先輩に手伝って貰ったんだ。何で声楽なのか聞いたら、遠野先輩が関わってるんだって。

遠野先輩ってさ、意外と音痴みたい。
錦織先輩はそれを直さないと死んでも死にきれないって言ってたよ。そんな思い詰める事なのかな?
因みに、ピアノが超上手い錦織先輩よりコーヤ先輩の方が楽器触らせたら神レベルなんだ。でも、音楽はもうやらないんだってさ。コーヤ先輩と藤倉先輩は建築科に進学したんだよ。何か、子供の頃に憧れた秘密基地をいつか自分で建てるんだって。


でも夏休みには建てる予定とか言ってた。
年賀状出せって言われて教えられた住所は、アメリカのセントラル市ナイトメア自治区。番地がないの。何だそれ。まぁ、年賀状くらい出しますよ。お世話になってるし、藤倉先輩は身内みたいなものだし…。

因みに、隼人様に年賀状出そうとしたら、アメリカのセントラル市ナイトメア自治区カントリーエリアに出せば良いんだって。実家丸ごと引っ越したらしい。訳判んないね。


そんなこんなで何だかんだ忙しかった俺は、昨日は早めに寝ちゃって、定時のテレビ電話をすっかり忘れちゃってたんだ。


『大体、李がお前に定期報告入れてんのは判ってんだ。どうせあの糞カルマに入れ知恵でもされたんだろ』
「遠野会長は何も言ってないよ!朱雀先輩、曲がりなりにもカルマだったんだから、総長さんの悪口は良くないよ?」
『誰がカルマだ!』

耳がキーンってなった。


でもさぁ。
俺が一年の時、遠野会長…と言うより殆ど神帝陛下の所為で色々あってから、朱雀先輩とお付き合いする事になったのは覚えてる?

たこ焼きが美味し過ぎる大阪の皆さんに惜しまれつつ、リスキーダイスは解散する事になった。朱雀先輩から引き継いだシゲさん達も引退しちゃったから、纏める人が居なくなったんだ。


で、俺がプチ記憶喪失になってる時に、朱雀先輩が遠野会長と約束してたとか何とかで、シゲさん、ユートさん、村瀬さんの三人はカルマに入る事になったんだって。
買い物上手で商売上手な三人は、俺を誘拐した事のあるカルマの美人さん、さっきも言ったけどピアノが超上手い錦織先輩の傘下に入ったの。見た目じゃ判んないけど、錦織先輩は物凄いケチなんだ。
そのお陰で何だかんだ上手く稼いだ皆は、朱雀先輩への借金も返済して何だかやり遂げた表情だったよ。

あの時は隼人様が半笑いで「感動した!」って言って、食堂でランチ奢ってくれたんだ。たま〜に優しい時があるから、あの人は何か嫌いになれない。村瀬さん曰く、カルマで一番扱い易い人が隼人様だって言ってたけど。

でも、朱雀先輩とは顔を合わせる度に口論が始まるんだよ。流石に殴り合いはないんだけど…俺はやっぱ苦手だなぁ。チビとかブスとか言われるし。本当の事だけど!

でも山田先輩が「誰がチビだと?」って言うと土下座してるから、隼人様自体はそんなに怖くない。
良く判んないけど、隼人様は山田先輩には逆らえないって言ってたんだ。何か、本家と分家?とか。遠縁の親戚って言ってたかな。

あ、でも、隼人様は遠野会長の身内でもあって、お祖父さん同士が兄弟だとも言ってたかも。
あの辺は何だか複雑だから俺には判んないけど。

隼人様は最上学部の情報処理科に進んだけど、芸能界のお仕事が忙しくてあんま授業には出てないみたい。でも情報処理を卒業しないと色々困るんだって。ちょっと顔色悪かった気がしないでもない。
山田先輩が言うには、凄く頑張ってるんだって。人は見掛けによらないね。

しかもユートさんはあのコーヤ様の親友になって、えっちぃDVD三昧だった。うーん、だから留年しちゃうんだよ。コーヤ様、わざとユートさんを留年させたんじゃないのかなって疑ってしまう。
でも卒業式では二人抱き合ってワンワン泣いてたから、違うのかも。何でかユートさんだけ藤倉先輩から蹴られてたけど。痛そうだったなぁ。


それと。
卒業式の後、錦織先輩に薔薇の花束を渡してたコーヤ様が、


『食用でない花などゴミでしかないのに、何の嫌がらせですか』

って言われて、燃え尽きてた。
隼人様と藤倉先輩が「ダセェ、振られてやんの」って何だか穏やかな顔で呟いてたのが印象的だね。

そう言えばカルマの皆さんは東大に合格したらしいけど、結局行ったのは優しい加賀城先輩だけだった。お金持ちの社長さんなんだよ。会うとジュース奢ってくれる、大好きな先輩。

そう言えば山田先輩も東大には合格したのに結局入学しなくて、新婚旅行のリハーサル?か何かで世界一周中らしいけど、大学はどうしたんだろ?

白百合様はずっと昔に大学卒業してて、最上学部には中央委員会に残る為だけに在籍してたそうだから、あの人の人生は山田先輩の為にある様なもんなのかも知れないね。
そう言ったら満足げに頷いてたから間違いないね。


って事を懐かしく思い出しながら話して、



「こんな感じだったから、朱雀先輩もカルマなんだと思ってた〜」
『馬鹿野郎!お前は俺に謝れ!謝って乳首見せろ!』
「え?ごめんね?えっと、はい、乳首」
『ったく、まめこを娶った瞬間から、ンな下らねぇ事とは縁を切ったっつの』
「娶ったって…もう、突飛なんだから。でもそのくらいの覚悟があったんだね。朱雀先輩、チューしたいくらい好きだよ」

感極まってスマホの画面に吸い付いたら、朱雀先輩の鼻の下がにょりんと伸びた。うーん、面白い顔だ。かっこよくはない。うん。可愛い様な、やっぱり可愛くはない様な。

「あのね、朱雀先輩が大好きすぎてヤキモチ焼いちゃったの。疑ってごめんね?許してくれる?」
『それじゃ仕方ねぇ…許してやらん事もない。今のもっぺん言え、録音すっから』
「ずちぇ、ありがと」
『違ぇ、好きすぎてヤキモチの下りを…まぁ良い、今のでも抜こうと思えば抜けるかも知れん』
「えっ、今のじゃ絶対無理だよ。俺、えっちぃ声出そっか?」
『それは後でで良い。先に、あれやれ』
「あれ?」

朱雀先輩がバナナを掴んだ。

ああ…あれかぁ。
うーちゃんが中央委員会に入って一人部屋になってから、かわちゃんと二人で暮らしてる俺としては、まだちょっと抵抗があるんだよね。
かわちゃんは風紀の見回りとか色々忙しくて夜中まで帰ってこない事もあるし、一度寝たら中々起きないし、良いんだけどさ。

「ちょっと待って、今スマホを充電器に立てるから」
『クレードルな』
「そうそう、クレードル。ふぅ。今日はバナナがないから、アイスでも良い?パピコのチョコ味があるよ!購買で一番安いアイス」
『しゃぶれるもんなら何でも良い』
「しゃぶ…もう、朱雀先輩ったら本当に変態なんだから…」

遠距離の恋人同士は皆やってるんだよね?
遠野先輩曰く『エアなめなめ』って奴。あと『エアはむはむ』だっけ?皆やってるなら、やらなきゃいけないよね。

「あ、朱雀先輩、これって何か色が似てない?チョコ、生々しいね!」
『おま、興奮すんだろうが、飛ばし過ぎんな』
「あ、ごめん」
『ちょっと待てよ…』

ごそごそとズボンのファスナーを下ろしてる朱雀先輩を見て、俺もパピコ片手にズボンを脱いだ。かわちゃん、帰ってきても俺の部屋のドアは開けないでね。かわちゃんの為を思って鍵掛けてるんだからね。

「先輩、ティッシュが残り少ないから短めにしてね?」
『ざけんな、いつも通り二時間だ』
「ええー、俺どうせ途中で寝ちゃうよ?朱雀先輩、一回が長いんだもん」
『お前が早すぎんだろ。寝るならスマホは固定したまんま、カメラ範囲内で大股開いて寝ろ。途中でパンツ穿いたら怒るぞ』
「もう、俺いつも丸出しで寝てるんだからね!風邪引いたらどうするのさ!」
『責任は取る、嫁に来い。面倒臭ぇ、今すぐ来い。とっとと来い』
「はいはい、卒業したらね。はい、じゃ、始めます。今日も宜しくお願いします」
『宜しくお願いします』

ここから先はとても話せないから、今回はこれにて閉幕。美味しいパピコをこんな事に使ったら絶対に駄目なので、皆さんは真似しないで下さい。



宜しくお願いします。


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