技術者は過信する
Are you ready?
「あ?」
単純な賭をしよう。
ギャンブルは趣味じゃない、なんてモラル染みたつまらない台詞はお断り。
誰も不幸にせず、傷つけ血を流す事も、傷つけられ血を流させる事もない、単純にして明快なギャンブル。負けても勝っても無くすものは何一つない、そんな賭をしたくはないか。
金に狂った亡者のそれとは違う、ただただ楽しいだけの。
そして運任せでもない、そんな不思議なギャンブルをしよう。
ルールはただ一つ…。
頭を使っても使わなくても、ルールはただ一つ。負けるか勝つか、それだけ。
そんな子供でも出来るゲームだ。乗るならそれ相応のものを差し出せ、逃げるならそれでも構わないけれど。
…ほら。
敵に背を向けるなんて、二人には出来ないからね。
そうだろう? 逃げれば雄の名折れだ、乗ればとりあえず陳腐なプライドは保たれる。
単純だから男は、単純なものに弱い。
さぁ、悩む必要はないね。
乗るか逃げるか二つに一つ、負ける気がしないなら乗れば良い。逃げるなら何処へでも。誰も笑ったりしないから、世界の果てへでもお行き。
ルールはたった一つ限り、乗るなら掛け金を差し出せ。
金も宝石も価値はない。許可するのは己自身の・全て、のみ。勝てば敗者はお前のものに、負ければその逆。単純明快、誰も傷つけずに誰も不幸にせずに金も宝石も意味のない宇宙最高の賭をしよう。短く長い楽しい時間を。
観客は太陽だけ。ギャンブルをしている事など誰も気付かない。
表面上は常日頃の君と俺、水面下は一瞬の隙も許さぬ攻防、良いね、ゾクゾクしないか。
音が聞こえたなら、きっとそれがブルーシグナル。開始のベルは二人にだけ聞こえる筈だ、覚悟は良い?
「鬼ごっこをしよう」
「はぁ?」
「捕まったら、捕まえた相手の言う事を聞くんだ。…どう?」
欲しいならそれ相応のものを差し出すのが定説だ。
(ねぇ、君は俺が欲しい?)
(ならばどうするべきか、)
「へぇ、面白ェな。だったら俺が勝ったら、お前は俺のモンだ」
「…ああ、それで良いよ」
(俺は君がとても欲しいよ)
(悩む必要は、ないね?)
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