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最終更新2021/10/15(詳細はUPDATE)

嘘吐きなマインドリップ

付き合い始めてもう半年になる。


吐く息が白く濁るのを見て、冬だなと他人事の様に心の中だけで囁いた。

「頬が赤くなってますね」

隣の人の呼び掛けに聞こえない振りをするのは、未だに慣れていないからだ。
普通の恋人同士の様に、なんて。キスさえしていない純情高校生には無理がある。



「風邪を引かない様に、これを」


無視した事に気を悪くした様でもなく、いつもの穏やかな声音で自分のコートを掛けてくれる人。自分の方が余程寒がりの癖に、とか。
心の中の唇は素直じゃない。


本当に好きなのかよ俺を。
なら何で何もしねぇの。


ほら、醜い悪態ばかり繰り返し繰り返し。
でも、これも実は語弊があって。

付き合い始めて数日目に、帰り際いつも頭を撫でてくれた人が、その日だけ、唇を僅かに外したキスをした。
触れるか触れないかの、挨拶程度だったけれど。その時は酷く驚いて、心構えも当然出来ていなくて、だから意味もなく涙が零れるのを止められなかったのだ。

ずっと、この人は謝り続けた。
何も悪くないのに、嫌だった訳ではないのに、




少しだけ、驚いただけなの・に。


それから、帰り際の挨拶は頭を撫でるだけに戻った。
たった1度だけのフレンチキス、それも唇と呼べるのか怪しい頬すれすれの。



ちらりと、隣に目を向けた。すぐに気付いた人が柔らかく微笑む。
あの時より大分背が伸びた人。見上げなければならなくなって、だから目を伏せる癖が出来た。


「…そろそろ分かれ道ですね」

ああ、また。
優しい手に頭を撫でられて、「子供扱いすんな」と心の中だけで悪態吐くのだろう。





「それでは、また明日」

欲望に忠実な唇を開けば、「置いていかないで」「キスして」「エロいの全部して」なんて吐いてしまうから。


「……………………」
(子供扱いすんな…)

何も言えなくなる様に、心は常に、嘘を吐く。

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