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最終更新2021/10/15(詳細はUPDATE)

幼馴染み

何一つ。
不満も愚痴も弱みも憤りも喜びも不安も後悔・も。口にしない。

その表情には常に(まるでコンクリート並みに分厚い)微笑みの防御壁。
だから俺は常に(まるでスパイシネマの主人公並みに神経を研ぎ澄ませて)それを見極めなければならない。


「好きだ」を信じない癖に。
「愛してる」と言えば、お前は。



『ご冗談ばかり』

笑う瞳には常に(まるでダイヤモンド並みの豪胆さを秘めたレンズの)防御壁。


『質が悪いですよ、貴方らしくない』
『信じないつもりか』
『信じるだけの理由がありませんね』

どれだけの感情を、
(その微笑みさえ覆う透明なレンズ一枚に)

秘めているのかと。
(常に、半狂乱する瀬戸際に立つ者の歯痒さで)


「俺が、信じるに値しない訳か。…お前にとって」
「誰もそんな話は、」
「言ったも同然だろうが」
「どうしてですか?俺は一言も、そんな事を言った覚えはありません」


どれだけの感情を、
(不満や憤りや不安や寂寥を)
俺が噛み殺しているのか、など。

(きっとお前は、)


「もし俺が本気じゃなかったら、」
「なかったら?」
「お前は、今頃。…暢気に宿題なんざやってねぇだろうな」

(言葉にした所で)
(信じてさえ、くれずに)
(冗談にして、笑い飛ばすのだろう)


「え?」
「いや、何でもねぇ。…問3の公式が判らん」
「え、あ、ああ、これは…」

賢い頭、人好きのする柔らかい笑み。
然しその実かなり単純な奴だと(まるでスパイシネマの主人公並みに神経を研ぎ澄ませてきた俺は)、知っていた。

「好きだ」を信じない癖に「愛してる」と言えば明らかに警戒するお前の(その愛想笑いよりも無機質な眼鏡よりも尚酷く、俺を傷つける)態度を。
どうすれば元の(ただの友人でしかない)態度に戻せるのか。



「分母xがルート8なので、分子にルート8を積分し、」

知っているんだ。
(狡い俺は)

「…で、最後に変数yを微分すると」
「なぁ、」
「はい?…っ?!」

ほら。(さっきまでのお前なら考えられない程)
容易に、抱き締められる。

「なっ?!」

今更。(自分の単純な性格に気付いた所で)
押し倒されて両腕を拘束されたお前に、何が出来る。


「教えてやろうか」
「何を、」
「さっきの答えを」
「答え、とは…」
「こう言う事だ」
「ぇ?」
「俺がもし、本気じゃなかったら。とっととこうなってた」
「っ」

ああ、賢い頭はすぐに意味を理解して。
都合が良いのか悪いのか、弾き出した答えを認めるのが嫌なのだろう。


「お前の意志なんて尊重せずに。男の傲慢さで、傷付けるのは。
  …酷く簡単だとお前も判るだろ?」
「…」
「そうせずに。今もこうやってわざわざそれを教えてやっている俺が。ご冗談ばかり・に、思えるなら」
「………」
「お前は判り易いな」
「…どう言う意味ですか」
「俺の事が好きで堪らないって顔、してる癖に。いつまで意地を張れば良いんだ」
「な、」
「図星突かれると眼が泳ぐ癖。凄く可愛い」
「っ」

蝉が鳴いている。
蒸し暑い部屋の中、それでも寄り添う様に肩を並べていたから。今更思い出した。
何度繰り返しても信じてくれない愛しい人の所為で、忘れていた。

「…暑ぃな」
「なら、放して下さい」
「嫌だね、これからもっと近付くつもりだからな」

好きだと叫ぶくらいじゃ全然足りない。
抱き締めただけじゃ全然足りない。

だから、早く。

「愛してる」
「ゃめ、」
「素直に信じとけよ。そうすりゃ万事解決。何も悩む事なく、」



常識も不安も宿題も投げ捨てて、口付けられる・から。


  PCサイトのものを改改編。本能のままに生きる溺愛攻めと、素直になれない優等生。

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