ビーストライクインパルス
嫌いじゃない。
そんな相手に抱かれる事がこんなにも苦痛なのだと、初めて知った。
「う…あっあ…!」
揺さぶられながら、切羽詰まった声で繰り返し愛の言葉を唱える男を、歪んだ視界に捉える。
「く、るし…!」
「っ、す、げ…気持ち、い…!」
顔を合わせれば喧嘩ばかり。
時には本気で殴り合った事もあっただろうか。
けれど嫌いではなかった。
それは多分、お互いが、そう。
「っ、あ!はっ、ひ…ぁっ」
「好きだ…!好きだ!好きだ!っ、愛してる…!」
「や、ぁ!」
こんなに押し殺した声は初めて聞いた。いつもはわざとらしいほど冷静な男が、余裕の欠片もないなんて。
「あっあっあ、んぅ、…ひン!」
それを笑える余裕は残念ながら持ち合わせていない。
喉からひっきりなしに漏れる甲高い喘ぎが、他の誰でもなく自分のものだと思うと、今にも死にたくなるほど恥ずかしかった。
なのに、やめようとしない獣は二匹。
理性の欠片も残していない、それこそ獣の様に熱を燃やしている。
「あ、うぁ!…ひゃっ、ゃ、も…もっと、奥…!」
嫌いじゃない。
そんな相手から求められる事が、こんなにも苦痛だなんて。
知っていたら、何か変わっていたのだろうか。
「っ、幾らでも叶えてやるから…!好きだって、言ってくれ…っ」
「んっ、あああ…っ!すきぃ、好きだからぁ…!」
嫌いじゃない。
つまりは単純に、溢れるほどの愛しさが全身を支配し渦を巻き、喉を突き破りそうだ。
溢れ続ければ良い。とめどなく果てまで。
「も、めちゃくちゃに、して…っ」
それこそ、理性の欠片も残さない動物的な衝動。
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