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最終更新2021/10/15(詳細はUPDATE)

海デート

そのノリは、彼の有名な『そうだ、京都に行こう。』ってなものだった。


「のぅ、お兄さんや」
「あ?何だそのジジ臭ぇ言い回しは」
「ときに、スイカ割りって、どうよ」
「………………は?」







それはあいつ流の、デートのお誘いだったらしい。











「胸踊る夏! 弾けるビキニ! 皆様今日は、貴方のイケメンinパシフィックです!」
「騒ぐな。少し落ち着け。そして自分で自分をイケメン言うな。ほら、ラムネ」
「Ohさんきゅー」

駅を出てから始終落ち着きの無かった恋人は、潮風の源へ辿り着いた瞬間「ラムネー、ラムネが俺を呼んでるー」とおねだり(可愛いから良いけど)をカマし。
あまつさえ俺がそれを仕入れにいった数分の間に、持参した(と言っても荷物持ちは俺だ)パラソル・シート・簡易チェアーを広げ、イルカボートをポンプではなく口で膨らませながら叫んでいた。

「むぅ、全然成長しないぞ? このサメ」
「…イルカだイルカ。ほら、明らかにポンプ踏んだ方が早ぇ」
「えー、自力で膨らませる方が楽しいじゃろー?」
「………………………どうじゃろ」

基準が全く判らん俺が駄目なのだろうか。
いや、多分嫌がらせだろう。ラムネ売りから此処までの往復(約20M)間で計5回(家から数えると優に二桁を越す)女に声を掛けられたからだ、恐らく。

「はぅ…サメも萎えたままだし、…ナンパしにいこっかな」

付け加えて恋人は酷く根に持つ小悪魔。全力で女共を無視し、睨みを効かせていたハニーの元へ真っ直ぐ帰ってきた(元はと言えば奴がラムネを欲しがった所為)、よりによって俺と言う彼氏の前で浮気宣言とは。


甚だ遺憾だ。


「イルカだっつの。萎えた言うな………何がナンパだ、却下だ却下」
「弾けるビキニー」
「弾ける俺の海パンで我慢しろ」
「………はぁ…」



何故そこで溜め息を吐く。



「…ほら、『サメ』デカくなったぞ。泳ぎ行くだろ」

恋人が放り投げたものを律儀にもポンプで膨らませていた俺は、ナンパから気を逸らせる為にパンパンに膨らんだそれを担いだ。

「えへ。行くー」
「…日焼け止めは?」
「ぬりぬりした! お前もぬりぬりする?」
「……………いや」

やべぇ、可愛い。なんて惚れた欲目甚だしいか。
だが然し男心、抱き締めたいのを堪えて海へ向かう。


「いざ、サメ号処女航海! 俺の漂流記はここから始まった〜」
「湘南の、それも太股程度の水位ですが。」
「ダーリンのツッコミは的確且つ辛辣だね!」
「そりゃどーも」
「進め〜面舵マグロいっぽーん!」
「…ラジャー、取り舵いっぱい…」

言うまでもなく船長気分らしい恋人の乗るサメ号を引っ張るのは、俺だ。人力車ならまだ風流だろうに。

「海も夏も好き〜v」
「俺はどっちも嫌いになりそうです…」

デートと呼べるのか、これは。なんて虚し過ぎる。


「でも、ダーリンの方が百倍好き〜vvv」
「………!」
「ちゃんと海に連れてきてくれたから、チュウしちゃる」






前言撤回。
……………うん、結構幸せ。




「ねね、後でスイカ割りもする〜!」
「………そうだな」


全然OK。
お前のワガママなら幾らでも。


  PCサイトのものを改編、振り回され攻め×マイペース受け。

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*めいん#
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